グリーンランド 中谷芙二子+宇吉郎展:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

2018年08月01日号
次回9月3日更新予定

artscapeレビュー

グリーンランド 中谷芙二子+宇吉郎展

2018年02月01日号

会期:2017/12/22~2018/03/04

メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]

霧の彫刻家として活躍する中谷芙二子と、その父で雪の研究で知られる科学者・エッセイストの中谷宇吉郎の展覧会。中谷芙二子さんには昔お世話になったし、宇吉郎の随筆集は寺田寅彦に触発されてワクワクしながら読んだものだ。ぼくが芙二子さんを知ったのは、彼女が原宿にビデオギャラリーSCANを開設した1980年のこと(その2階にはサプリメント・ギャラリー、のちの岡崎球子画廊があった)。そのころ中谷さんはビデオアートだけでなく、「霧の彫刻」のアーティストとして国際的に活動されていた。「霧の彫刻」が初めて発表されたのは1970年の大阪万博のときだから、もう半世紀近く世界各地で続けて来たことになる。今回の展覧会はその「霧」を中心に、芙二子の初期の油絵やビデオ作品、宇吉郎の雪の結晶写真やアルバムなどで構成されている。

メインの展示室には、晩年の宇吉郎が雪氷の研究のため毎年訪れていたグリーンランドから採集した石が置かれ、その奥に霧を発生させる噴霧装置がある。霧は一定時間ごとに発生する仕掛けだが、たくさん並んだノズルからシューッと白い気体が噴出するのを見て、なにかいいしれぬ不安を感じてしまった。それはひとつには、いくら霧とはいえ、ふだん美術品を展示するギャラリー内で水分を振りまくことがきわめて挑戦的で、暴力的ですらあるように感じたこと。もうひとつは、考えすぎかもしれないが、徐々に白いガスが人のいる部屋を満たしていくのを目の当たりにして、ナチスのホロコーストを連想してしまったのだ。これがもっと閉鎖的な空間だったらおそらく作者もやらなかっただろうけど、ここはガラスのブロックを積み上げた開放的な空間なので、そんな連想をすること自体が場違いだったかもしれない。でも想像しちゃった。

2017/12/28(木)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00042819.json l 10143069

2018年02月01日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ