artscapeレビュー
リヒテンシュタイン──華麗なる侯爵家の秘宝
2012年11月15日号
会期:2012/10/03~2012/12/23
国立新美術館[東京都]
展示室に入ると円柱とアーチがしつらえてあり、ちょっと宮廷の気分。もう少し進むと、壁も天井もバロック調に装飾された大部屋に出る。おお、これは安っぽいながらもいい感じ。きっとこんな部屋で王侯貴族どもは芸術を楽しんでいたに違いない。壁には絵画のほか装飾ゴテゴテの鏡やタペストリーが掛けられ、床にはテーブル、キャビネット、彫刻が置かれ、なんと天井にも楕円形の絵が4点はめられているではないすか。展覧会で天井に絵を飾るというのはあまり聞いたことがない。ディスプレイばかりに気をとられているが、作品もすばらしいのが来ている。クエンティン・マセイス《徴税吏たち》やクリストファーノ・アッローリ《ホロフェルネスの首を持つユディト》は、数ある同主題の絵のなかでも優品だと思うし、ブリューゲルの数点の作品はコピーとはいえ貴重なもの。しかしなんといっても圧巻なのはルーベンス。幅4メートルを超す《占いの結果を問うデキウス・ムス》をはじめ大作が4点も。額縁も絢爛豪華で、ゴテゴテの装飾が60センチくらい突き出してる額もある。これどうやって運んだんだろう。でも大作もいいが、ルーベンスの技巧を味わうには小品や下絵がいちばん。なぜなら弟子の手が入ってないし、本人の筆の勢いが直に感じられるからだ。とくにチラシやポスターにもなった《クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像》のような家族の肖像は、プライベートなものだけにひしひしと伝わってくるものがある。いやー満足。
2012/10/12(金)(村田真)