artscapeレビュー
小沢さかえ展「海底オーケストラ」
2012年11月15日号
会期:2012/10/05~2012/11/17
京都ではほぼ3年ぶりという小沢さかえの個展が開催されている。画面の多様な筆致、描かれたモチーフ、色彩。これまでの小沢の作風やイメージを鮮やかに裏切る印象のものがいくつもあり、密かに興奮した。森の動物や小動物、少女など、以前からしばしばその画面に登場していた存在も今回の発表では多くがあまり主張しておらず、少し気味悪さが匂う混沌の世界や色鮮やかな光景にそっと紛れこむように描かれている。踊るような魚の群れ、揺らぐ植物、白い花などに囲まれて凛と佇む女性を描いた《昨日の夢まで何マイル》、《鴨川》や《ドナウ川》といった川の連作など、観る側の想像力に迫ってくるような、濃密な物語を潜めた迫力を今展の多くの作品に感じた。あるところではダイナミックにあるところでは精緻な筆触と色彩を目で追っていくと、その世界に自分の身を任せて、屈曲する水の流れに漂っているような感覚になる。心地よくも頼りない揺らぎの描写もまた魅力的だった。
2012/10/03(金)(酒井千穂)