artscapeレビュー

Melting Core──支持体に関する5つの考察

2012年11月15日号

会期:2012/09/07~2012/10/07

Gallery OUT of PLACE[奈良県]

造形表現における「支持体」に注目した展覧会。といっても今展は、さまざまな表現に見られる支自体の多様性を提示するというものではなく、作品そのものが支持体と密接に関わりながら成立する表現をとおして、それぞれの作品における支持体の在り方、作家や作品との関係を探っるというもの。木製パネルに幾重にも塗った分厚い絵の具(の層)を、彫刻刀で彫ったり削ったりして再構成した蛇目という作家の絵画作品、キャンバスに孔を穿ち、裏側からその孔を通して絵の具をスクィーズした(絞り出した)関智生の作品なども興味深かったが、ここでは特に、原稿用紙やノートなどを大量に揃えてカットし束ねたものを色のついた液体に浸して乾燥させた百合一晶の一連の作品《水平線》に惹かれた。百合の作品には、紙の膨張や木枠の変形など、どれにも制作の過程で起こった自然現象による影響、変化の様子が現われている。たんに液体の色が紙に染み込む時間の予想だにしない偶然性や自然の驚異といったことではなく、紙という「支持体」に「自己」としての表現(という行為)と「他者」である自然(の現象)との出会いの瞬間が顕現したそれらが、新たなものを発生させる、そんな未来の期待や可能性のイメージを喚起していくのが素敵だ。自然風や光などを制作工程に取り入れ、時の経過やその移ろいを美しく見せるアーティストや作品はほかにもあるが、百合の表現は創作行為の根源そのものにもアプローチしていて深い。今回は久しぶりの発表であったが、長いあいだ温めていたものの成果を見せてもらった気分で嬉しかった。次は個展を見たい。


百合一晶の作品

2012/10/07(日)(酒井千穂)

2012年11月15日号の
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