artscapeレビュー
第6回恵比寿映像祭 トゥルーカラーズ
2014年04月01日号
会期:2014/02/07~2014/02/23
東京都写真美術館[東京都]
注目したのは、カミーユ・アンロによる《偉大なる疲労》(2013)。インターネット上から博物学的ないしは宇宙論的なイメージを渉猟し、それらを再構成することで創世記の神話を物語った。
複数のウィンドウが重なるディスプレイを画面に導入したり、ヒップホップのラッパーに神話を唄わせたり、いかにも今日的な映像の質が興味深い。いかなる物語であれメディアが時代にそぐわなくなれば伝達力を急速に失ってしまうことを思うと、おそらく神話の最適化を図ったのだろう。
ただ、問題なのはその内容の大半をすでに覚えていないことだ。確かに映像というメディアにリアリティはある。けれども、その一方で氾濫する映像はたちまち忘却の彼方に消え去ってしまう。イメージは辛うじて残るかもしれないが、言葉や意味はほとんど残らない。
おそらく作者はそのことを重々承知しているのだろう。皮肉に富んだ作品のタイトルは、編集作業に費やした膨大な時間と労力に加えて、報われにくい映像の特性をも暗示しているように思われた。
2014/02/21(金)(福住廉)