artscapeレビュー

関かおり『ケレヴェルム』

2014年04月01日号

会期:2014/03/14~2014/03/16

シアタートラム[東京都]

十数回の暗転を繰り返して、5分ほどのシークェンスが淡々と繋がっていった。90分。ほぼ無音。唯一アンプから発せられたのは、数回のため息の声。肌色に近い灰色の衣裳と床に敷かれた鏡映りする素材のほかには、どんな飾りもない。猛烈にストイックな舞台に、関かおりの美意識が描かれた。1人のシークェンスもまた5人以上のシークェンスもあるが、多くの場合、ゆっくりと姿勢を変えながら、2人か3人かが体を絡み合わせる。互いに頬を重ね、こすったりと、親愛の情を示しもするが、彼らの様子は基本的に人間性を欠いている。フィクショナルな未知の生物? 動きに羞恥心を感じさせないところがあり、そんな無防備さゆえに被虐性が感じられると、ずいぶん昔に会田誠《ジューサーミキサー》(2001)に興味を惹かれると関が筆者に話してくれたのを思い出した。男性を女性が抱え上げるなど、アクロバティックな流れも生まれるが、ゆっくりなので、スピードがあれば可能な目くらましも、アスリート・ライクな派手さもない。もっと滑らかに動くことが目指しているのではと思わされるぎこちなさがないわけではないが、奇妙だが美しい生命体がうごめいている状態は、見応えがあった。滑らかな美しい身体の佇まいは、まるで陶器のようだが、この陶器は現代的なアレンジが施されていて、美しさに勝るグロテスクさが漂っている、そんな感じだ。「21世紀のアールヌーヴォー」なんて言葉も浮かんできた。バレエのように緻密なルールと身体訓練がなされた果てに達成しうるダンスであり、その意味で「新しいバレエ」と呼んでもいいのかも知れない。ただ、この一種の審美主義がどんな波紋を巻き起こしていくのか、ぼくにはまだよくわからない。

関かおり インタビュー「ケレヴェルム 金沢ver.」

2014/03/15(土)(木村覚)

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