artscapeレビュー

窓花──中国の切り紙

2014年04月01日号

会期:2014/02/28~2014/03/16

世田谷文化生活情報センター:生活工房[東京都]

黄河の上流から中流域に広がる黄土高原に位置する陝西省延川の人々は、ヤオトン(窰洞)と呼ばれる山にトンネルを掘った家に住んでいる。ヤオトンには正面に出入口、その脇に格子窓がある。新年を迎えるための窓の飾りとしてつくる赤い切り紙を「窓花」といい、格子窓の障子紙とともに毎年貼り替えられる。小さな鋏一本で切り出された図柄には、吉祥の祈願や魔除けの意味があるという。文化大革命期には旧来の風習や民間宗教が禁じられ、伝統的な図案を用いた窓花も迷信や旧風俗として禁じられたが、1980年代以降、民間芸術のひとつとしてよみがえった。この展覧会は、文化人類学者・丹羽朋子氏と造形作家・下中菜穂氏による現地のフィールドワークに基づき、ただ切り紙の作品を並べるだけではなく、生活の場を再現し、写真やテキスト、映像によって陝西省延川の人々の暮らしのなかの位置づけを見せる。また、「窓花」のほかに、死者を弔うための「紙花」や「紙銭」、先祖に供えられる「寒衣」などの切り紙、動物や人をかたどった「麺花」と呼ばれる小麦細工など、折々に用いられる細工物も並んでいる。
 昨年夏、長期にわたる未曾有の豪雨によって、陝西省北部地域の多くのヤオトンが倒壊してしまったために、平屋建てや集合住宅に移転する人も多いという。人々の暮らしかたが変わることで、「窓花」の伝統はこれからどのように変わっていくだろうか。[新川徳彦]

★1──関連レビュー:花珠爛漫「中国・庫淑蘭の切り紙宇宙」(artscape 2013年10月01日号)



展示風景

2014/03/11(火)(SYNK)

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