artscapeレビュー
黒瀬剋展
2017年07月01日号
会期:2017/06/06~2017/06/17
galerie 16[京都府]
絵画作品が出来上がるまでには紆余曲折があるが、われわれが見られるのは完成した画面のみで、途中経過は分からない。しかし黒瀬剋は、作品が変化していく過程にも完成作と等価な魅力があると考え、それを可視化することを思い立った。その結果生まれたのが、《メタモルフィック・ペインティング》と《コンティニュアス・ペインティング》という2つのシリーズだ。前者は1枚の絵を分解してパズルピースにしたもので、画面の配列が変更可能となり、そこに上描きすれば新たなイメージが発生する。後者は、作品を写真撮影してプリントの上から描き足す作業を繰り返すことで、イメージの変遷を可視化するものだ。前者はパズルを組み換えればまた新たなイメージを創造でき、後者はプリントを複数用意すればひとつのイメージから複数の方向に分岐ができる。つまり黒瀬の作品は、制作過程を可視化することと、完成作は無数の可能性のひとつにすぎないことを示すのがテーマなのだ。筆者は黒瀬以外の画家からも、過去に何度か同様の悩みを聞いたことがある。この問題は画家にとって普遍的なのだなと、改めて実感した。
2017/06/06(火)(小吹隆文)