artscapeレビュー
神戸市立外国人墓地/再度公園
2017年07月01日号
再度公園[兵庫県]
本年1月に神戸市は開港150年を迎えた。神戸の「港と文化」をクローズアップするさまざまな記念事業が催されている。神戸の近代化を支えた外国人たちの眠る広大な神戸市外国人墓地が一般公開されている(申込み、抽選制)。以前から一般開放されている横浜や大阪と異なって、神戸の場合は開港時の約束に従うかたちで、11年前まで遺族以外には門を閉ざしていた。もうひとつ、神戸の外国人墓地が異色なのは、2007年に墓地を含めて国の名勝に指定された「再度公園」にあること。眺望に恵まれた再度山の中腹にある修法ケ原は、緑豊かな開放感のある立地。周回道路や石段で分けられた宗教/宗派別の区画に、現在60ヵ国、およそ2700名の人々が埋葬されている。お墓の形状もそれぞれ個性的で、塔のように高く巨大なものからケルトの文様を思わせるもの、シンプルな矩形のものまで多様性に富む。神戸港の初代港長マーシャル、炭酸水で知られるウィルキンソン、造船業に貢献した実業家ハンターら、近代産業の発展に尽くした人々の墓石が並んでいる。ここに眠ることになった外国人の人生にも似て、この墓地自体の歴史もかなりの変遷がある。1868年1月1日の兵庫開港(慶応3年12月7日)に先立って、江戸幕府は居留地外国人のために、小野浜に墓地を用意した。だが同地は海に近かったため、明治期には山手の春日野墓地を設置するが、昭和初期にはここも飽和状態になる。戦後になってようやく、修法ケ原に両墓地の新設移転が完了した。今後、神戸市は外国人墓地を歴史遺産として広く知ってもらうために、土地整備や見学会を拡大するそうだ。開港以来、ハイカラ、モダンと形容されてきた神戸の発展と、阪神淡路大震災を経た復興、そして港湾都市の未来に思いを馳せた。[竹内有子]
2017/05/28(日)(SYNK)