artscapeレビュー
糸川燿史写真展「大阪芸人ストリート」~1994年から1999年『マンスリーよしもと』の扉を飾った芸人たち~
2017年07月01日号
会期:2017/06/01~2017/06/18
10Wギャラリー[大阪府]
大阪を拠点とするベテラン写真家で、1970年代初頭の関西フォークのミュージシャンを捉えた写真集『グッバイ・ザ・ディランⅡ』や、村上春樹の1作目の長編小説を映画化した「風の歌を聴け」のスチールで構成される『ジェイズ・バーのメモワール』などで知られる糸川燿史。本展では彼が1994年から1999年に『マンスリーよしもと』の表紙のために撮影した写真のなかから、精選した約130点が展示された。写っているのは、池乃めだか、末成由美、間寛平、チャンバラトリオ、坂田利夫、チャーリー浜などのお笑い芸人たち。約20年前の写真なので、当然ながら皆若い! なかにはすでに解散した漫才コンビや、最近はテレビで見なくなった芸人の姿もあり、時の流れが感じられた。お笑い芸人のポートレートはふざけた表情やポーズを連想しがちだが、糸川はそれを良しとしなかった。彼らを大阪各地に連れ出し、同時代の風景とともに撮影したのだ。それにより作品は、単なるポートレートを超えた時代のドキュメントとして成立している。ベタに陥りがちな素材を上手に料理した写真家の勝利である。
2017/06/01(木)(小吹隆文)