artscapeレビュー
TAKT PROJECT「SUBJECT ⇋ OBJECT」
2017年12月15日号
会期:2017/11/18~2017/12/03
アクシスギャラリー[東京都]
デザインの展覧会はもはやモノを見せることではない、思考を見せることである。本展を見て、そう強く感じた。TAKT PROJECTは、吉泉聡をはじめとする4人から成るデザイナー集団である。彼らはプロダクト、グラフィック、建築とそれぞれに異なる専門領域を持つため、ひとつのプロジェクトに対して、横断的に思考することができるうえ、ワンストップでデザイン提案できることが強みだ。新進気鋭のデザイナー集団として、いま、デザイン業界で注目されている。そんな彼らが設立5年目にして初の個展を開いた。
本展では、TAKT PROJECTがこれまでに行なってきた自主研究プロジェクトを中心に7つの事例が展示されていた。いずれも主題「SUBJECT」に対し、それを具現化した物「OBJECT」を展示するという構成である。その一つひとつの主題はまさに「問いかけ」とも言うべきで、彼ららしい思考のプロセスが見て取れる。例えば「素材とプロダクトの境界線を探る」という主題では、電子部品とアクリル樹脂を混ぜ合わせた電気が通る複合材で、懐中電灯や電気スタンドとして機能する物体を作った。一般的に、家電は電子部品が外装材で覆われた作りになっている。しかし彼らは粘土をこねて器を作るかのように、素材そのものが製品となるようなシンプルな家電の作り方を探った。
このように「こうあるべき」という既成概念や枠組みから抜け出すことで、別の可能性につながるのではないかと彼らは思索する。最もユニークな主題だったのは「音楽的に創造する」で、街で環境音を録音するフィールド・レコーディングに着想を得て、レコーダーの代わりにハンディー3Dスキャナーを持ち、街でさまざまな物の形を採取し、そのCADデータを元に新たな造形を作った試みである。おそらくデザインに関わりのある者以外は、これらの主題はややマニアックに映るに違いない。しかも展示物は、今すぐ製品化できるものばかりではない。それでもあえて問いかけるのは、彼らが慣習通りのデザイン手法に満足することなく、何かしらのブレイクスルーを常に求めているからだ。こうした姿勢を持ち続けているからこそ、彼らから革新的なデザインが多く生まれているのである。
2017/11/17(金)(杉江あこ)