artscapeレビュー
死なない命/コンニチハ技術トシテノ美術/野生展:飼いならされない感覚と思考
2017年12月15日号
死なない命(金沢21世紀美術館、2017/07/22~2018/01/08)
コンニチハ技術トシテノ美術(せんだいメディアテーク、2017/11/03~2017/12/24)
野生展:飼いならされない感覚と思考(21_21 DESIGN SIGHT、2017/10/20~2018/02/04)
自然と技術の関係について考えさせられる展覧会がいくつか開催されている。「死なない命」展は、展示物だけでは全体を把握するのが困難だったが、学芸員の高橋洋介氏の案内で見たおかげで理解が深まった。トップのやくしまるえつこは、なんちゃってサイエンス・アートではなく、ガチで音楽を記憶するメディアとしての遺伝子に挑戦している。写真家のエドワード・スタイケンは、植物の品種改良にのめり込み、これをテーマにしてMoMAで展覧会まで開催したという。ほかにもBCLによる遺伝子組み替えのカーネーション、川井昭夫による彫刻としての植物などがあり、攻めた企画である。これで思い出したのが、石上純也によるヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展2008の日本館における温室のプロジェクトにおいて、彼のヴィジョンを本当の意味で完成させるには、現存する植物では不可能で、植物も新しく創造する必要があったことだ。究極のアートである。
ユニークな会場構成となった「コン二チハ技術トシテノ美術」展は、興味深い作家を選び、手の技に基づく生きる術としてのアートを掲げている。例えば、修復の技術を独自に改変させた青野文昭は、極小の作品を新規に増やし、貫禄のある彫刻群のインスタレーションをつくり出す。また井上亜美は狩猟をテーマとし、門馬美喜は「相馬 野馬懸け」をモチーフにした神々しい馬を描く。「死なない命」展のようなハイテクではないが、プリミティブな技術による人と自然、もしくはモノの関係をダイナミックにとらえている。中沢新一がディレクターをつとめる「野生」展も、おなじみの南方熊楠や縄文を紹介しつつ、「飼いならされない感覚と思考」のサブタイトルをもつ(なお、英語タイトルに含まれる「TAME」の語は、あいちトリエンナーレ2019と共通する)。ただし、全体的なデザインがおしゃれ過ぎるのが気になった。これでは商品として消費されるのではないかと。
川井昭夫(死なない命)
青野文昭(コンニチハ技術トシテノ美術)
「野生展」会場風景
2017/11/09(木)(五十嵐太郎)