artscapeレビュー
没後70年 北野恒富展
2017年12月15日号
会期:2017/11/03~2017/12/17
千葉市美術館[千葉県]
北野恒富というと、甲斐庄楠音や岡本神草(来年5月から千葉市美でもやる)らとともにデロリ系の日本画家だとなんとなく思い込んでいたが、違った。たしかに大作の《淀君》や大正期のポスターなどは多少デロっているものの、むしろ鏑木清方(東京)、上村松園(京都)と並ぶ大阪の美人画を代表する画家として知られているそうだ。そういわれれば、襖の前の芸妓を描いた《鏡の前》と《暖か》の対作品などはそそられるものがある。ちなみに《鏡の前》は黒い着物に赤い帯、《暖か》は赤い着物に黒い帯と対照的で、前者は着物に飛天、後者は襖に若衆が描かれるなど工夫が凝らされている。しかし美人画だけでなく、雨に煙る街並を描いた《宗右衛門町》や、前面に柳を大きく配した《道頓堀》など風景画も負けず劣らず妖しい雰囲気が漂う。ちなみに《宗右衛門町》は川端龍子、小林古径、下村観山ら日本美術院の21人が連作した『東都名所』の1点で、東京の名所を描く組物なのにひとり恒富だけ大阪の宗右衛門町を描いているのだ。
2017/11/19(日)(村田真)