2019年07月15日号
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artscapeレビュー

北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃

2018年01月15日号

会期:2017/10/21~2018/01/28

国立西洋美術館[東京都]

2018年はパリで日本の文化を紹介するジャポニスムの展覧会やイベントが目白押しだが、上野の美術館においてその前哨戦と言うべき企画展が続く。「北斎とジャポニスム」展は、19世紀末から20世紀初頭の西洋において北斎の浮世絵がいかに受容されたかについて、当時の研究書、絵画、工芸から丁寧に辿る。おそらく学芸員が頭をひねりながら、細かく調べた類似例を数多く紹介しており、興味深い内容だった。ただし、はっきりとした北斎の絵や構図の引用、彼からの影響と言えるもの、少し似てはいるけどあまり関係ないのでは? といった異なるレベルの事例が混在しているのが気になった。したがって、すべて北斎やジャポニスムだけに起因させるには無理も感じられた。それにしても改めて驚かされるのは、北斎の作品のバリエーションの豊かなことである。なるほど、これだけひとりで多くのパターンを提示していれば、類似例も探しやすいかもしれない。

もうひとつの企画は、前の月に訪れた東京都美術館の「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」である。これはパリで浮世絵と出会い、大きな影響を受けたゴッホの作品を辿るものだ。さらに当時のジャポニスムの様相や、彼の死後に人気が高まり、日本におけるゴッホの紹介の経緯のほか、日本人によるゴッホの聖地巡礼の記録を紹介していたことが興味深い。とりわけ、現地の芳名帳、訪問した人物の書簡、その際の写真やフィルムなどを掘り起こした展示には、調査研究の成果がうかがえる。なお、ゴッホが精神に問題を抱え、晩年に病院で描いた樹木や植物の絵は個人的には面白い作品だが、これらもジャポニスムの文脈で括ることは疑問だった。逆に言えば、こうした企画では、北斎を含む日本の美術とヨーロッパの作品の違いも、あえてきちんと指摘しておかないと、一般の観衆にとっては、なんでもジャポニスムの自己肯定に回収されかねないという危惧も残った。

2017/12/14(木)(五十嵐太郎)

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