artscapeレビュー
DOMANI・明日展PLUS×日比谷図書文化館 本という樹、図書館という森
2018年04月01日号
会期:2017/12/14~2018/2/18
日比谷図書文化館[東京都]
文化庁の海外研修制度(在研)の成果を発表する「DOMANI・明日展」の関連展示。きっかけは昨年の「DOMANI・明日展」の出品作家の折笠良が、ギャラリートークで彫刻家の若林奮の著書『I.W─若林奮ノート』について触れたこと。若林も在研の初期のころフランスに滞在した経験があり、そのとき訪れた先史美術の遺跡について書いたのが『I.W─若林奮ノート』だ。同展は、当時若林が収集した石片や絵葉書、写真、スケッチブックなどを中心に、「本」に関連する在研経験者の作品を選んだってわけ。会場をあえて日比谷図書文化館にしたのもそのためだ。手描きアニメの折笠や、ペラペラマンガみたいなアニメの原型を出した蓮沼昌宏、ヨーロッパの古い図書館を鉛筆で描いた寺崎百合子らの作品は直接的に本をイメージさせるが、小林孝亘や宮永愛子らはいささかこじつけっぽい。
帰りぎわに上階の図書室にも藤本由紀夫の展示があるといわれたものの、時間がないのでスルーしようと思ったが、やっぱり急ぎ足で見ることに。いやー見てよかった。本棚の隙間にアルファベットのパスタを散りばめたり、「Look」「Book」と1字ずつ変えながら「Head」「Read」へとアナグラムしたり、「ECHO」という文字を鏡の上にのせたり(天地逆転しても変わらない)、全紙サイズの種類の異なる紙を閉じた超大型の白紙本を置いたり、文字と本をテーマに遊んでいるのだ。これこそ「本という樹、図書館という森」を楽しむ作品群にほかならない。やっぱり図書館でやるなら展示室より書棚や閲覧室を使いたい。っていうか、よく使わせてくれたもんだ。
2018/02/17(村田真)