2019年07月15日号
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artscapeレビュー

日本スペイン外交関係樹立150周年記念 プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光

2018年04月01日号

会期:2018/02/24~2018/05/27

国立西洋美術館[東京都]

会場に入っていきなり出くわすのが、ベラスケスの《フアン・マルティネス・モンタニェースの肖像》。ベラスケスより一世代上の彫刻家の肖像とされるが、人物の描写に比べ右下の塑像の描き方がなんともお粗末。チョビヒゲをはやしているのでモデルはフェリペ4世らしいが、まるでしりあがり寿のマンガではないか。続いて、彫像を触る盲目らしき男性像(リベーラ)、キリストの顔が現れた聖顔布(エル・グレコ)、パレットを片手に磔刑像の傍らに立つ画家の絵(スルバラン)などが並んでいる。みんな美術を主題とする作品ばかりだなと思って戻ってみると、第1章は「芸術」だった。ほかにもイダルゴの《無原罪の聖母を描く父なる神》や、カーノの《聖ベルナルドゥスと聖母》、リシの《偶像を破壊する聖ベネディクトゥス》など、神様が絵を描いたり、彫刻の聖母像の乳房から飛ばされた母乳を修道士が口で受けたり、修道士が美術品を破壊したり、日本人が理解に苦しむ宗教画がいっぱいあって楽しい。

第2章は「知識」で、ここでも犬儒学派の哲学者を描いたベラスケスの《メニッポス》がトップを飾り、第3章の「神話」もベラスケスの《マルス》から始まっている。ふつう展覧会の目玉作品はもったいぶって最後のほうに展示するものだが、今回は惜しげもなく各章の頭にベラスケスを持ってきている。これはつまり、見るべき作品はベラスケスだけではありませんよという自負の表れではないか。ちなみに第4章「宮廷」は《狩猟服姿のフェリペ4世》、第5章「風景」は《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》、第7章「宗教」は《東方三博士の礼拝》と、第6章の「静物」を除いてトップはいずれもベラスケス作品で占められていて、なんとも贅沢な気分。

ベラスケス以外にも特筆すべき作品を挙げると、まずティツィアーノの《音楽にくつろぐヴィーナス》がある。ベッドに横たわる裸のヴィーナスをピアノ弾きの男性が振り返って見ているエロチックな場面だ。同じ主題の絵がほかにも2点あるが、これがいちばん先に描かれたようだ。見る者を圧倒するのが、カルドゥーチョ帰属の《巨大な男性頭部》。縦横それぞれ2メートルを超す巨大画面いっぱいにいかつい男の顔が描かれているのだ。なぜこんな絵が描かれたのか不明だが、驚かすつもりで描いたとしたら現代的な発想ではないか。このまま画面をつなげて全身を描いていけば、10メートルを超す巨人像になるだろう。アルスロートの《ブリュッセルのオメガングもしくは鸚鵡の祝祭:職業組合の行列》も驚異的。幅4メートル近い横長の画面に、ブリュッセルのグランプラスで行進する人たちと背後で見物する人たち、合わせて数千人を描き込んでいるのだ。単純に、よくめげずに描き上げたもんだと感心する。同展は点数こそ約60点と絞られているが、大作が多いので見ごたえがある。

2018/02/22(村田真)

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