2024年03月01日号
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創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年 名作誕生—つながる日本美術

2018年06月01日号

会期:2018/04/13~2018/05/27

東京国立博物館[東京都]

東近の「横山大観展」に続いて東博の「名作誕生」内覧会へ。サブタイトルどおり「つながる日本美術」だ。それにしても会期がまったく同じで、会場もどちらも国立の施設。主催は前者が日経と毎日の相乗り、後者が朝日系列と異なるが、なにか申し合わせでもあったのか。「名作誕生」の頭には「創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年」と冠してある。『國華』とは大日本帝国憲法が公布された1889年、同じ年に東京美術学校(東京藝大の前身)を開校した岡倉天心らによって創刊された日本美術専門誌。現在は朝日新聞社が発行しており、現役の美術雑誌では世界最古ともいわれ、値段も5千円(特別号は7千円)+税と高い。

そんな『國華』の編集委員と東博の研究員によって構成された展覧会、というと退屈に聞こえるかもしれない。たしかに退屈だ、とくに似たような仏像や仏画がズラリと並ぶ第1章「祈りをつなぐ」は。ところが第2章になると、雪舟と中国絵画、宗達と鎌倉絵巻、若冲と狩野探幽などを比べて、模倣・転写・再利用の作例を暴き出している。こうした巨匠たちのサンプリングやリミックスは、専門家筋には常識でも素人衆にとってはとても新鮮だ。まあそんな難しい話は抜きにしても、雪舟の《四季花鳥図屏風》、若冲の《仙人掌群鶏図屏風》、等伯の《松林図屏風》、あるいは《風俗図屏風(彦根屏風)》や《誰が袖美人図屏風》など、国宝・重文級の作品が見られるだけでも価値はある。最後に、いささか唐突ながら、岸田劉生の《野童女》が伝顔輝《寒山拾得図》と、《道路と土手と塀(切通之写生)》が北斎の《くだんうしがふち》などと比較展示してあり、なぜ劉生の2点だけ近代以降で出ているのか理解しにくい。たしかに劉生は日本の古美術にも精通していたが、古典とのつながりをいうならそれこそ大観を持ってくればよかったのに。そこはいろいろ大人の事情があったのだろう。

2018/04/12(村田真)

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