artscapeレビュー
ターナー 風景の詩(うた)
2018年06月01日号
会期:2018/04/24~2018/07/01
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館[東京都]
2、3年前に大規模なターナー展をやったせいか、今回は中規模の展覧会。カタログを見ると、全187点と点数こそ多いものの、版画が112点を占め、水彩66点、油彩はわずか9点しかない。しかも版画の大半は郡山市立美術館の所蔵品。つまり6割以上は国内から調達したものなのだ。だいたいターナーの主要作品はロンドンのテート・ブリテンが持っているのに、今回はテートから1点も借りていない。これでよく「ターナー展」が成り立ったなと感心してしまう。しかし発見もあった。本の小さな挿絵として描かれた「ヴィニェット」と呼ばれる水彩画だ。風景画を枠のない円形内に収めたもので、縦横が各10センチちょっとしかないけど、細密に描かれている上、色彩は虹色に輝き、ミニアチュールのように美しい。これはほしくなってしまう珠玉の小品。壮大な風景画を得意とするターナーとしては、らしくないけどね。らしくないといえば、横浜美術館の「ヌード」展にターナーの春画が出ていてびっくり。ターナーって、意外と奥が深いのかもしれない。
2018/04/23(村田真)