artscapeレビュー
ゆらぎ ブリジット・ライリーの絵画
2018年06月01日号
会期:2018/04/14~2018/08/26
DIC川村記念美術館[千葉県]
ブリジット・ライリー、なつかしいなあ。単純だけど、パステルカラーの波形のパターンはけっこう好きだった。日本では70年代にヴィクトル・ヴァザルリらとともに、オプアート(錯視芸術)の代表的作家として話題になったが、やがて新表現主義が台頭して消息が途絶え、以来40年近く忘れられていた。その個展が日本で開かれると聞いて驚いた。まず、彼女がまだ生きていたことに。そして、ずーっとオプアートを継続させていたことに。しかもそれを、忘れっぽいはずの日本の美術館が持ってきたことに。
ライリーは1931年生まれだからもう87歳。展覧会は1961年制作のモノクロの錯視的な抽象画に始まり、60年代なかばにカラフルな波形のオプアートを確立していく過程が見てとれる。このころの作品は凝視していると本当に目も身体も揺らいでくる。いちばん揺らいだのは1967年の《大滝2》で、見ているうちに目がくらんでくる。70-80年代には直線(ストライプ)による構成が増え、絵画としては洗練されてくるが、波形ほど揺らがない。ちなみに揺らぎは画面のサイズと色彩の組み合わせによって異なるようだ。ここ20年くらいはストライプの幅が広がった直線と曲線の組み合わせとなり、また壁に直接描くウォールペインティングも試みている。今回は幅4メートルを超す《ラジャスタン》という壁画を披露。といっても描いたのは本人ではなくアシスタントだが(実は60年代からアシスタントに描かせているらしい)、80歳を過ぎてもなお新作に意欲を見せる姿勢は見習いたいものだ。
2018/04/13(村田真)