artscapeレビュー

ジャポニズム2018 響きあう魂

2018年09月15日号

会期:2018/07/13~2019/08/21

ルーブル美術館、ロスチャイルド館[フランス、パリ]

現在、パリでは「ジャポニスム2018 響きあう魂」と題して、日本を紹介するさまざまなアートイベントが行なわれているが、おそらくもっとも目立つのは、7月にルーブル美術館のガラスのピラミッドに設置された名和晃平の新作《Throne》だろう。地上レベルからも見える中心の高い場所に金色に輝く玉座が鎮座し、I.M.ペイによる建築空間、あるいはガラスを介して見えるまわりの古典主義の建築群と張りあう存在感を示した大作である。実際、王政のシンボルだった旧宮殿やピラミッドといった権力の歴史に触発されており、今度は人工知能が支配者として君臨する予感を表現した彫刻だという。ちなみに、名和の作品はある程度の抽象性をもっているので、《サン・チャイルド》のような炎上は起きにくいかもしれない。なお、ガラスのピラミッドにおいて、こうした空間インスタレーションを行なうのは最初ではないが(アジア人として名和は初)、半年間設置される予定だ。

その後に訪れたリヨンでも妖怪をテーマにしたジャポニスムの展示が開催されていたが、パリではもうひとつロスチャイルド館で、「深みへ─日本の美意識を求めて─」展を見ることができた。歴史建築の床を使う李禹煥や大巻伸嗣の空間インスタレーションが印象的だった。一方で伊勢神宮の模型はかなり唐突に置かれていたり、工芸の部屋があまりに明る過ぎるのには違和感をおぼえた。名和はここでもアンリアレイジとのコラボレーションを行なったほか、あいちトリエンナーレで初披露した《Foam》が地下の大空間で展示されていた。ただし、展示の方法はだいぶ変えており、真っ暗ではなく、むしろ色のある照明を使い、泡の世界に包まれるというよりは、まわりから眺めるオブジェになっていた。またおそらく泡の動きも制御しており、あいちに比べて、ほとんど動かず、静止した状態に近い彫刻だった。それにしても、新作の《Throne》と大作の《Foam》をほぼ同時期にパリで設置できるとは、名和晃平が主宰するSANDWICHの底力に感心させられる。

名和晃平《Throne》


ロスチャイルド館


「深みへ」展、李禹煥(左)、大巻伸嗣(右)


「深みへ」展、名和晃平《Foam》


2018/08/13(月)(五十嵐太郎)

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