artscapeレビュー

たけうちかずとし「妄想植物園」

2018年09月15日号

会期:2018/08/10~2018/08/23

ソニーイメージングギャラリー銀座[東京都]

たけうちかずとしの写真作品を初めて見たのは、2016年の第5回田淵行男賞の審査の時だった。その時に特別賞(フォトコン賞)を受賞した「五分の魂」は、さまざまな昆虫をオブジェに見立てて構成した作品である。今回の野菜や果物や野草をモチーフにした「妄想植物園」はその続編というべき仕事だが、彼のユニークな発想と高度な技術力はそのまま活かされていた。例えば「ナルシスト」の水仙はブランコに揺られ、西瓜は「遠い星からやって来た宇宙船」に仕立てられている。赤い実のミズヒキを「水引」に見立てるというしゃれた発想の作品もある。30点の作品のそれぞれが詩的な小宇宙として見事に自立しており、しかもそれらが相互に結びついて気持ちのいいハーモニーを奏でていた。今回はタイトルやキャプションは最小限に抑えられていたが、作品の一つひとつに散文詩のような言葉が付いていても面白いかもしれない。

たけうちの写真のスタイルは、日本ではどちらかといえば異端と見られがちだ。だが、ヨーロッパなどではもっと高い評価を受けそうな気がする。ギャラリーが銀座4丁目という絶好の場所にあるので、観客の多くが外国人観光客なのだが、特にイタリア人から熱烈な反応が返ってきたと聞いた。たけうちは、今後も「自然物をアート化」した作品をライフワークとして発表していく予定で、昆虫、植物の次は動物を考えているという。これまでより、大きさや動きという点でハードルの高いテーマだが、もしそれが実現すればさらにスケールの大きな作品になっていくのではないだろうか。

2018/08/22(水)(飯沢耕太郎)

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