2020年07月01日号
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artscapeレビュー

「Under 35 Architects exhibition」展覧会とシンポジウム

2019年11月15日号

会期:2019/10/18~2019/10/28

うめきたSHIPホール[大阪府]

大阪における秋の恒例となったU35(「Under 35 Architects exhibition 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会2019」)の展覧会とシンポジウムに今年も参加した。昨年のゴールド・メダルに選ばれた中川エリカはシード枠を使わず、不参加となったが、セレクションに公募だけでなく、推薦制度を導入したこともあり、いつもより個性的な若手建築家が揃った。それぞれの出展者を紹介しよう。

今年のゴールド・メダルに選ばれた秋吉浩気のプロジェクトは、デジタル・ファブリケーションの時代において、ハウスメーカーとは違う、新しい建築生産を視野に入れたもの。かつてFOBが挑戦した試みの現代ヴァージョンのようにも感じた。


秋吉浩気の出展作


伊藤維の作品は、フォルマリズム的な手法をベースとしているが、コンテクストを読みながら、それを崩していく住宅である。展示に用いた模型のための什器は家具としてリサイクルされるのも興味深い。


伊藤維の出展作

パーシモン・ヒルズ・アーキテクツ(柿木佑介+廣岡周平)は、埼玉の観音堂において片方の側面を開くデザインを試みた。なるほど、これは空間が奥に向かって展開する宗教建築において、新しい手法である。


パーシモン・ヒルズ・アーキテクツの出展作


佐藤研吾は、インドや福島でワークショップを展開しつつ、モノの工作のレベルから建築を捉えなおそうと企てる。その方向性は、全体性や構成に向かうよりも、スカルパ的なリノベーションに相性がいいのではないかと思われた。


佐藤研吾の出展作


高田一正+八木祐理子は、コペンハーゲンの運河の水上に建築的なパヴィリオンを浮かせるプロジェクトを展開している。来年、世界運河会議が名古屋で開催されるので、日本の場合、類似した試みはどこまで可能なのかに興味をもった。


高田一正+八木祐理子の出展作


津川恵理は、公共空間の実験や神戸のコンペの最優秀賞案などに対し、新しいノーテーションを構想している。おそらく、これが設計にどのようなフィードバックをもたらし得るかが今後の鍵だろう。



津川恵理の出展作


百枝優は、Agri Chapelから続く、樹木状の天井の架構によって、葬祭場でも空間の特性を獲得している。この手法を冠婚葬祭以外のプロジェクトで採用する場合、どのような展開になるかが期待される。


百枝優の出展作


なお、今年のゴールド・メダルの討議では、完全には説明しきれない謎や魅力を残す試みの伸びしろが注目され(しばしば審査の場面で起こることだが)、明快に設計されたことで限界もわかってしまう実作組が割りをくらう展開だった。


Under 35 Architects exhibition 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会2019 公式サイト: http://u35.aaf.ac/

2019/10/19(土)(五十嵐太郎)

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