2021年07月15日号
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artscapeレビュー

「さいたま市民の日」記念企画展 第6回「世界盆栽の日」記念・「さいたま国際芸術祭 Since2020」コラボレーション展 ×須田悦弘・ミヤケマイ

2021年05月15日号

会期:2021/04/23~2021/05/19

さいたま市大宮盆栽美術館[埼玉県]

本展は「さいたま国際芸術祭2020」招聘アーティストの作品とさいたま市大宮盆栽美術館が所蔵する盆栽とのコラボレーション展である。招聘アーティストは須田悦弘とミヤケマイの2人で、彼ら現代アーティストによって盆栽飾りがどのように変身するのかが見どころだった。恥ずかしながら、本展を観るまで私は盆栽に関してまったく知識がなかった。さいたま市に大宮盆栽村があることも、そこが日本一有名な盆栽産地であることも初めて知ったくらいである。したがって盆栽飾りを「席」と数えることや、普段、盆栽は屋外にあり、客をもてなすためにわずか数日間だけ屋内に入れて飾ることなども一から教わった。本展では須田が1席、ミヤケが7席の作品を発表。須田は盆栽ではなく、盆器とのコラボレーションを試みた。同館が所蔵する「均釉楕円鉢」という鮮やかで厚ぼったい青磁の鉢の底から、自身の彫刻作品である一輪の可憐な菫の花を“咲かせ”、そこに本物の生がないにもかかわらず、生き生きとした生命感を表現したのである。


須田悦弘《菫》(2021)木彫・彩色、木 均釉楕円鉢(大宮盆栽美術館)


対してミヤケは盆栽飾りや床飾りの伝統様式に則りながら、1席ごとに物語性のある作品をつくり上げた。盆栽飾りの基本は三点飾りである。三点とは掛軸、盆栽、添えもの(水石や小さな草もの盆栽)のことで、確かに三点が絶妙なバランスで配置された空間は黄金比的な美しさがあることを思い知った。そもそも彼女は日本の工芸品や茶事などに造詣が深く、床の間のしつらえに倣った作品をよく発表している。本展への参加が決まった際には「テンションが上がった」と明かす。そのため彼女の真骨頂とも言うべき作品群が本展では観られた。例えば最初の席では「ONE FOR ALL, ALL FOR ONE」という英語フレーズを刺繍したレース模様の草木染めの掛軸を掲げ、外来種のアメリカツタの盆栽と、伊達冠石の上に水晶玉のようなガラス玉を載せた水石を展示した。様式は伝統的でありながら、一つひとつの要素は洋物であり現代的である。この外し方が実に彼女らしい。「ONE FOR ALL, ALL FOR ONE」はラグビーワールドカップの盛り上がりにより有名になった言葉だが、彼女はこの言葉を現代のデジタル社会やコロナ禍と結びつけ、良くも悪くも個と世界との即時的なつながりを示唆する。ほかの席でも同様にユニークな外しとコンセプトを打ち出し、“新しい”盆栽飾りを披露してくれた。決してオーソドックスなスタイルではないが、私のように盆栽に無知な者に対しても門戸を開くにはアートは有効だ。その点で実に画期的なコラボレーション展であると感じた。


ミヤケマイ《One for All, All for One 知足》(2021)和紙・金箔・銀箔・刺繍・レース模様の草木染め・クリスタル(軸先) 《未来 Crystal Ball》伊達冠石・耐熱ガラス・水 アメリカツタ(大宮盆栽美術館)

ミヤケマイ《月は東に日は西に Things That Dose Not Change》(2021)絹・山椒花紋金襴・麻・銀箔・洋紙・アクリル・顔料・神代杉(軸先) 斑入り石菖、虫かご、バッタ いちょう(大宮盆栽美術館)


公式サイト:https://www.bonsai-art-museum.jp/ja/exhibition/exhibition-7167/

2021/04/25(日)(杉江あこ)

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