artscapeレビュー
カタログ&ブックス | 2021年5月15日号[近刊編]
2021年05月15日号
展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
※hontoサイトで販売中の書籍は、紹介文末尾の[hontoウェブサイト]からhontoへリンクされます
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ボイス+パレルモ
「ボイス+パレルモ」展(豊田市美術館、埼玉県立近代美術館、国立国際美術館 2021-22年)の公式カタログ。
1960年代のデュッセルドルフ芸術アカデミーで教師と教え子の関係にあったボイスとパレルモ。芸術概念を拡張し、積極的に社会へ働きかけたボイスと、抽象的で静謐な作品を作り続けたパレルモの個性は一見対照的でありながら、芸術を生の営みへと取り戻そうと試みた点では共通していた。──1960-70年代の両者の代表的な作品と本展企画者やドイツの研究者による書き下ろしのボイス論、パレルモ論、各論を軸に、アクションあるいは制作中の様子を捉えた多数のドキュメント写真や、ボイスがパレルモについて直接語ったテキストの全文翻訳など、貴重なアーカイブ資料を織り込んで重層的に構成した一冊。ボイスの「作品」と造形理論にあらためて光を当てるとともに、パレルモの活動を日本で初めて包括的に検証する。
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マーク・マンダースの不在
彫刻や言葉、オブジェを用いたインスタレーションによって国際的に評価を集める美術家、マーク・マンダース。国内美術館ではじめてとなる東京都現代美術館での個展開催にあわせ、待望の日本初作品集発売!
個展のカタログを兼ねた本書は、本邦初公開となるヴェネツィア・ビエンナーレに出品された作品や、重要な個展では必ず出品されてきた代表作を含む1000㎡に及ぶインスタレーション・ビューを今井智己が撮影。次章では、展覧会未出品20点を含む、計26点の作品について、マンダース本人によるテキストと図版で解説。その他作家のテキスト「マーク・マンダースの不在」「ドローイングのこと」や、スタジオ写真も収録した、作家マンダースを読み解く、貴重なモノグラフです。
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宇佐美圭司 よみがえる画家
2021年4月から開催される東京大学教養学部駒場博物館「宇佐美圭司 よみがえる画家」展のカタログ。東京大学中央食堂に掛けられていた《きずな》が不用意な廃棄処分で失われたことの反省とともに、傑出した画家として活躍するだけでなく旺盛な評論活動でも知られた宇佐美の仕事を広い視野から捉え直す。出品作品に加えて、代表的な作品の図版、彼自身の文章や詳細な文献目録なども収録し、今後の現代美術研究にも有益な一書。
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《黄金の林檎》の樹の下で アートが変えるこれからの教育
「人間として在る」ための学びと、アートはいかにかかわるのか──。アートと出会った瞬間に「あっ、すごい! 」と直感し、他者や世界と融和する子どもたちの「共生的感性」や、「生命」のつながりに美を見る「自然との共生」の思想から、そのすがたを探る。「共生」「持続可能性」「多様性」の象徴として東京・広尾の聖心女子大学に誕生した田窪恭治のモザイク壁画《黄金の林檎》をめぐってくり広げられた、現代社会におけるアート、そして教育論。2017年の完成記念シンポジウム、待望の書籍化。
惑星都市理論
コロナウイルス感染症の世界的な流行で、人々の移動が大幅に制限されるなかにおいても、まるで何も起きていないかのように駆動し続ける「世界経済」。それはすでに「惑星都市」が存在していることの証でもある。本書は、「惑星都市理論」(=プラネタリー・アーバニゼーション研究)という近年世界的に注目されている分析枠組みを用いて、「インフラ」「ロジスティクス」「リスケーリング」といった「惑星都市」を成り立たせる諸要素を考察しながら、「ポストコロニアル都市理論」「関係論的転回」「都市への権利」「自然の生産」など、欧米の都市理論を賑わせている対抗的ロジックの可能性と限界を見定め、その先を模索しようと試みる。「惑星都市」を私たちのものにするために。
虚像培養芸術論 アートとテレビジョンの想像力
1960年代、テレビジョンの想像力=「虚像」がアートを起動した。 磯崎新は都市デザインを虚業と称し、横尾忠則は虚像となり、高松次郎は影を演じた。今野勉はテレビの日常性を主張し、東野芳明は「テレビ環境論」を書いた。 マスメディアの想像力を分母に、現代を逆照射する戦後日本芸術論。
ディズニーと動物─王国の魔法をとく
ウォルト・ディズニーが創造したエンタテインメントは、米国大衆文化の代名詞であり、世界中を席巻している。姫と動物たちが織りなす夢と魔法の世界はいまなお拡大を続けるいっぽう、巨大資本を投入した反自然的な世界、徹底的に飼いならされた無菌化された世界でもある。ディズニーの物語は、現代の政治、社会、文化、自然に何をもたらしたか。その映像は私たちにどのような影響を及ぼしてきたか。その世界の舞台裏を探る。
言葉と衣服
私たちは生まれてからずっと、衣服とともに生活している。それなのに、衣服を語る言葉が貧しいのはなぜだろう。あいまいな用語が流通するファッションの世界に向き合い、本書は「言葉の定義=批評のためのインフラ整備」を試みる。ファッションをめぐる新たな思考が、この本からはじまる。
ここにあるしあわせ
2019年冬から2020年春にかけて、近藤亜樹が故郷・札幌にて描いた50点の作品群「ここにあるしあわせ」。
疾駆ZINE "YOUTH"
「Youth(仮)」展のオリジナルZINE 奈良美智さん初の短編小説や出展作家たちの物語、エッセイに加えて、様々な著者たちのYouthにまつわるエピソードを纏めました。
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https://honto.jp/
2021/05/14(金)(artscape編集部)