2021年10月15日号
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artscapeレビュー

茨城県のポストモダン建築をまわる

2021年05月15日号

[茨城県]

増沢洵が設計した水戸の《レストランよこかわ》でランチを食べた。外観はほとんど変更しておらず、インテリアは什器や建具を一部残しており、50年前になる1971年のモダニズム建築が今もかなりよい状態で現役で使われていることに感心させられた。今度から《水戸芸術館》に行くときはぜひ再訪し、また食事をしたい洋食店である。


増沢洵《レストランよこかわ》店内


同館で開催された「3.11とアーティスト:10年目の想像」展は、2012年に続く311関連の企画だが、今回はよく作り込まれた会場において、厳選されたアーティストたちによる想像をめぐる作品群を紹介している。被災地に登場した《伝承館》のしょぼい記録の展示をいくつか見ると、改めて長い時間のスパンで記憶を担うアートの役割が大事であることを確信した(筆者が芸術監督をつとめたあいちトリエンナーレ2013でも、「記憶」をテーマに掲げていたが)。特に小森はるか+瀬尾夏美の展示は、言葉によって強いイメージを喚起させ、見応えがあった。磯崎新によって西洋の歴史建築の引用が散りばめられた《水戸芸術館》(1990)は、オープンして30年が経ったが、外装の石材は劣化せず、古びれない建築として存在感を維持していた。


「3.11とアーティスト:10年目の想像」展より、小森はるか+瀬尾夏美の展示風景



「3.11とアーティスト:10年目の想像」展より、小森はるか+瀬尾夏美の展示風景



「3.11とアーティスト:10年目の想像」展より、小森はるか+瀬尾夏美の展示風景



「3.11とアーティスト:10年目の想像」展より、小森はるか+瀬尾夏美の展示風景


新居千秋の《水戸市立西部図書館》(1992)は、気合いを入れすぎなくらいのポストモダン、すなわちクロード・ニコラ・ルドゥーなどの新古典主義とグンナール・アスプルンドの図書館を合成した建築である。これは映画『図書館戦争』のロケに使われたり、四半世紀以上にわたって「建築の存在価値を発揮し、美しく維持され、地域社会に貢献してきた建築」JIA25年賞を受賞したように、当初のインパクトを失っていない。今や日本の建築デザインは、倉庫化するような安普請の時代を迎えているが、《西部図書館》は倉庫さえも立派で、驚く。


新居千秋《水戸市立西部図書館》


渡辺真理+木下庸子+山口智久による《真壁伝承館》(2011)は、ポストモダン的な直裁的な引用ではないが、街並みを意識し、ランダムな家型を反復する外観に、可動椅子式のホール・図書館・伝統的建造物群保存地区などを紹介する歴史資料館を収める。おそらく街区の形状から導いたパースの効く中庭の空間も興味深い。そして、ここを起点に、江戸時代から昭和初期の古い家屋が数多く残り、伝統的建造物群保存地区に指定された周囲の街並みを散策することを誘う。


渡辺真理+木下庸子+山口智久《真壁伝承館》


東京ディズニーランドや浅田彰の『構造と力』が登場し、日本におけるポストモダン元年というべき1983年に竣工した磯崎新の《つくばセンタービル》は、今回初めてホテルの部分(ホテル日航つくば)に宿泊することができた。これも様々な古典主義を引用し、複雑な形態操作を試みており、何度訪れても発見がある。劇的なデザインと広場の空間ゆえか、映画やドラマの撮影場所によく使われることも特筆したい。もっとも、コロナ禍のせいか、下の飲食店がかなり閉鎖されていた。


磯崎新《つくばセンタービル》、奥の高層部がホテル日航つくば


ちなみに《つくばセンタービル》からは、立体的に歩車分離された10分程度の徒歩圏で、伊東豊雄の《つくば南3駐車場》 (1994)、谷口吉生の複合施設《つくばカピオ》(1996)、原広司の《竹園西小学校》(1990)、坂倉建築研究所の《つくば国際会議場》(1999)などを見学できる。スター建築家が集合する、すごい密度だ。


伊東豊雄《つくば南3駐車場》



谷口吉生《つくばカピオ》



原広司《竹園西小学校》



3.11とアーティスト:10年目の想像

会期:2021/02/20~2021/05/09
会場:水戸芸術館 現代美術ギャラリー


2021/04/09(金)(五十嵐太郎)

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