artscapeレビュー
藍染の解剖展 BUAISOUの仕事
2022年01月15日号
会期:2021/12/27~2022/02/21
松屋銀座7階・デザインギャラリー1953[東京都]
2021年のNHK大河ドラマ「晴天を衝け」で渋沢栄一の生家が藍農家として登場したことで、藍染に注目した人も多いのではないか。そう、藍染は日本の伝統的な染色方法のひとつで、日本人の暮らしに古くから寄り添い親しまれてきた。大河ドラマでも描かれたとおり、藍の栽培、蒅(すくも/藍の葉を発酵させた染料)づくり、染色といった工程は、もともと、分業で行なわれてきた。しかし近年、藍農家や蒅師がめっきりと減り、藍染作家自らが藍の栽培から行なわざるを得なくなった例は多い。一次産業と二次産業の融合が進んでいるのだ。
「阿波藍」の名で知られる、藍の一大産地である徳島県でもそれは顕著だ。その徳島県で2015年に設立されたBUAISOUは、藍の栽培、蒅づくり、染色、商品デザイン、製作までを一貫して行なう藍染作家・職人ユニットだ。一次産業と二次産業のみならず、オンラインストアやワークショップ、展覧会などへの展開も含めれば、三次産業にまで手を広げていると言える。産業の先細りを嘆くのではなく、彼らはむしろその状況をチャンスと積極的に捉えているようにも映る。
さて、本展はBUAISOUの仕事を通して見る「藍染の解剖展」だ。展覧会担当はグラフィックデザイナーの佐藤卓。佐藤が長年取り組んできたプロジェクト「デザインの解剖」と同様の考え方で、1枚の藍染ポスターを解剖する。外側から内側に向かって細かく分析するという手法は同じで、本展では1から16までの項目で紹介されていた。それは「色」に始まり、「質感」「グラフィック」「ぼかし・滲み」……と続く。私も藍染作家や職人らとの交流が多少あるので、ある程度、藍染について知っているつもりでいたが、確かに専門的で詳細な情報は興味深かった。
藍染に限らず、日本の伝統工芸は全般的に先細りが続いている。昔ながらの分業制がいまだ残るのは大きな産地に限られ、全工程を一軒で担わざるを得ない産地は多い。こうなったら、さまざまな伝統工芸の「解剖展」をぜひやってほしい。これほど明確に、キャッチーに、全貌を伝えられる手段はないのだから。
公式サイト:https://designcommittee.jp/gallery/2021/12/dg776.html
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