artscapeレビュー
国際芸術祭「あいち2022」 常滑市エリアとその後の岡崎
2022年09月01日号
会期:2022/07/30~2022/10/10
今回の難関は、常滑市エリアかもしれない。一宮市エリアのようには自動車を使えない複雑な小径が続き、有松地区とは違い、地形の変化が激しく、登り降りが多い。夏だと猛暑のなかを歩くしかないから、秋に行くチャンスがある人は後まわしにすることを勧めたい。旧丸利陶管や廻船問屋 瀧田家など、焼き物の街並みをめぐる経験は楽しいが、迷いやすいので、もともと設定されていたやきもの散歩道の看板に加えられたあいち2022のサインが重要な道しるべになるだろう。
筆者はあまりの暑さにギブアップし、作品をひとつだけ飛ばして、冷房が効いているINAXライブミュージアムに涼みにいった。ここにもあいち2022の作品は展示されているが、充実した常設コレクションのほか、日本で「タイル」の名称に統一することが決まった百周年にあわせた「日本のタイル100年──美と用のあゆみ」を開催している。実はINAXライブミュージアムだけで半日は過ごせる内容をもつので、あいち2022の展示だけで帰るにはもったいない。全体としてあいち2022は、2日間だと、全エリアをまわるのは難しいだろう。作品を制覇するには、2日半から3日は欲しいところである。
さて、この日、筆者はあいちトリエンナーレ2013の会場になった岡崎市にも足を運び、桜城橋などの河川空間、強烈なインテリアをもつ喫茶レストラン「丘」、エウレカによる《Dragon Court Village》(2013)、studio velocityの《山王のオフィス》(2018)などを再訪し、いろいろな動きが起きていることを確認した。また岡崎市の非公式キャラクター、オカザえもんの人気も続く。新しい建築としては、まず英語、中国語の教育を行なう保育園、《クローバーハウス》(2016)を見学した。これは世界的に活躍する北京の建築事務所、MAD Architectsとしては、最小のプロジェクトだろう。室内に家屋のフレームを残しつつ、それを白い皮膜で包み、中間領域をつくる。手前は田んぼが広がり、この建築にとってまわりの風景も重要である。また地元の建築家、西口賢による《大地の家》(2018)にも立ち寄った。巨石群と樹のある半屋外は、一見アジアのリゾート風だが、しっかりと「建築」になっている。そして内部も、素材や光を絶妙にコントロールしており、知られざる名作だった。地方都市の岡崎における驚くべき豊かな建築シーンに唸らされた。
「国際芸術祭あいち2022 STILL ALIVE 今、を生き抜くアートのちから」公式サイト: https://aichitriennale.jp/
2022/08/01(月)(五十嵐太郎)