2022年12月01日号
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artscapeレビュー

中桐聡美、山田真実「測鉛をおろす」

2022年09月01日号

会期:2022/07/30~2022/08/28

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]

中桐聡美と山田真実による二人展。展覧会名にある「測鉛」とは、海の深さを測るための装置で、目盛や紐を施した綱の先につけて下ろす鉛製の重りのことだ。海へずんずん入っていく鉛によって、その深さを観察者に知らせる。本展において、その鉛は、木版画やシルクスクリーンにおけるインクが紙に押し付けられ、孔という境界を通り抜けて形を生むこと、境界を超えて相互の関係性を測り合うことと重ね合わされている。さらには、二人の取り組みもまた互いの測鉛のようだ。

瀬戸内海でシルクスクリーンの写真にカッターナイフでドローイングを重ねる中桐と、琵琶湖で凹凸版をベースに木版画に取り組む山田。アール・ヌーヴォーに由来を持ち現在も世界中で使われているガラスブロックの窓から覗き込んで見える海の風景写真を窓ごとに刷って見せる中桐と、主に江戸時代に使用され蒸気船の就航とともに姿を消した、琵琶湖の浅さに特化した形を持つ丸子船を彫り刷る山田。技法の違いがどのように対象との関係の結び方を変えるのか、あるいは各々の関心がいかに技法を選び取らせたか、使わせるかといった視点が鑑賞者に与えられる。とはいうものの、両者の作品やリサーチの軌跡が展覧会会場の中でパッキリと分けられているわけではない。それらの混在によって、鑑賞者は事後的にこの対比の強さに気付くことになるだろう。そして鑑賞者は思うのではないだろうか。二人は互いをどう思っているのだろうかと。

特にその相互的な距離感が展覧会で明示されることはないが、Instagramで二人は「景色」と「部屋」をテーマに展覧会に関連する写真を投稿している。それぞれの拠点から撮影された物々は視覚的に呼応し合い、連続性が見えてくる。二人は別にコレクティブというわけでもなさそうだが、会期終了後、二人はどうしていくのだろうか。Instagramが今後も更新されるのかどうかをそっと見守りたい。

展覧会は無料で鑑賞可能でした。


中桐聡美《ガラス窓》(2022)シルクスクリーン/水性インク、かきた紙
[Photo by Takeru Koroda, courtesy of Kyoto City University of Arts/撮影:来田猛、提供:京都市立芸術大学]


天井:山田真実《丸子船(イ)フナツクリ》(2022)水性木版/墨、和紙
床:山田真実《湖面に帆をはる》(2022)水性木版/墨、和紙、琵琶湖の石(海津、塩津、菅浦)
[Photo by Takeru Koroda, courtesy of Kyoto City University of Arts/撮影:来田猛、提供:京都市立芸術大学]



公式サイト:https://gallery.kcua.ac.jp/archives/2022/8724/
「測鉛をおろす」Instagram:https://www.instagram.com/sokuenwo/

2022/07/31(日)(きりとりめでる)

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