2022年12月01日号
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artscapeレビュー

山市直佑「Oneness」

2022年09月01日号

会期:2022/05/03~2022/05/15

Koma gallery[東京都]

山市直佑は旅をする写真家だ。山市の個展名であり作品のシリーズ名でもある「Oneness」は、唯一性と全体性という相反する意味を持つ言葉である。山市は2008年にはカザフスタン、2011年からはブルガリア、ルーマニア、アゼルバイジャン、ウクライナ、そしてロシアを訪れ、インタビューと撮影を行なってきた。撮影以降、グローバリゼーションで均質化する世界と、言いようのないその土地でしかなさに着目したシリーズとしていままでに何度か展覧会が開催されてきている。有名飲料メーカーのロゴはどこにでもあるのかと思ったり、石造りの建物の中にこんなダイナミックなエレベーターがと唸ったり。写真のレンズの向きがもう少し違えば、もうどこで撮影されたものだかわからなくなってしまいそうな作品が並ぶ。いや、そしたらまた何かその土地の固有性がどこかからか飛び込んでくるに違いないと思わせられる。

今回の展示は2022年5月に開始された。ウクライナ侵攻が続くいま、写真の見え方は変化した。当時撮影したキーウはほとんど残っていないと山市は言う。ロシアとウクライナは鉄道でつながっていて、朝8時半に列車に乗った山市は、夜20時半にはキーウにいた。鉄道の中でウクライナの人ともブルガリアの人とも片言のロシア語でやりとりができたこと。当時のメモと写真を見返しながら、2022年の山市の言葉はその二者の近さに引き寄せられる。

展覧会会場には額装された写真が端正に並び、全体の撮影地域が示されるだけで、撮影の仕方、どの写真がどの土地のひとで、どんなやりとりを山市としたのかは開示されない。だが、そのなかにはついさっき失われたものがあるかもしれない。わたしが写真からわかることはわずかだが、そのわからなさのなかですべての写真を見ようと思った。


山市直佑「Oneness」:https://yamaichinaosuke.info/works/oneness/
タイガの森を抜けて──写真家 山市直佑 ロシア・ウクライナ紀行──(PicoN!):https://picon.fun/photo/20220503/

2022/05/13(金)(きりとりめでる)

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