artscapeレビュー
ヴィラム・ウィンドウ・コレクション
2022年10月01日号
ヴィラム・ウィンドウ・コレクション[デンマーク、コペンハーゲン]
コペンハーゲン郊外にあるトップライトのプロダクトで知られる世界的なメーカーVELUXが2006年に設立したヴィラム・ウィンドウ・コレクションを訪れた。市の中心部からは電車とバスを乗り継いで40分弱、かつての社屋をリノベーションし、窓の歴史の展示や創業者ラスムッセン一族と企業の多面的な活動を紹介している。正面の上部にあるデザインは、天窓を通過する光をイメージしたかつてのロゴだという。エントラスの横の部屋では、窓をモチーフとする絵画も飾られていた。窓のイメージに囲まれた階段を降りると、紀元前から現代まで窓の歴史を一気にたどる通路が始まる。古代ローマ、ゴシックのステンドグラス、バロック期のヴェルサイユ宮殿、古典主義、アール・ヌーヴォーなどを経て、VELUXが誕生した1941年を含むモダニズムが続く。
そのあと美術館の収蔵庫にある引き出し型の絵画ラックのように、各時代の実際の窓が時代順に並ぶ。17世紀以降の歴史建築だけではなく、バウハウスの校舎から譲り受けたものも含まれていた。なるほど、これならコンパクトに多くのコレクションが入るだけでなく、両面から確かめることもでき、窓ならではの収納の手法である。なお、共通の色分けによって、歴史の通路、窓のラック、年表の時代が示されていた。
ノコギリ屋根ゆえに、上部から光が差す明るい室内には、わざわざ引き出さなくても、常設で数多くの古い窓や関連する部材、あるいは制作するための工具、材料、ガラス製法の歴史なども展示している。掃除がしやすいように、表と裏がぐるっと回転するなど、実にさまざまな開き方をする窓が存在することに感心させられた。またさまざまなタイプの窓を紹介するコーナーでは、防弾ガラスもあり、説明のボタンを押すと、ロビン・フッドがリンゴを射抜く場面さながらに、女性が顔の前に小さなガラスをもち、そこに男性が銃を撃って性能を示すという現代では信じられない白黒の資料映像が流れた。
特筆すべきは、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展2014において、中央館のエレメント展示で壁一面を使って紹介されたイギリスの建築史家チャールズ・ブルッキンズの窓コレクションが、現在ここに展示されていることだろう。彼とこのときの全体ディレクターだったレム・コールハースの会話の映像も見ることができる。ヴィラム・ウィンドウ・コレクションは約300の歴史的な窓を所有しており、やはり実物そのものを直接鑑賞できるのが、この施設の強みだろう。
2022/09/15(木)(五十嵐太郎)