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「Windowology: New Architectural Views from Japan 窓学 窓は文明であり、文化である」展

2022年10月01日号

会期:2022/09/18~2023/02/28

ヴィラム・ウィンドウ・コレクション[デンマーク、コペンハーゲン]

ヴィラム・ウィンドウ・コレクションは、北欧を中心にヨーロッパの歴史的な窓を数多く収集しているが、日本を含むアジアの窓はほとんどない。そこで3年前に「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」が東京国立近代美術館でオープンした際にディレクターらが来日し、古材店から障子などを少し購入したらしいが、この分野を強化すべく、筆者が監修した窓研究所の展示「Windowology: New Architectural Views from Japan 窓学 窓は文明であり、文化である」を招待することが企画された。同施設では、こうした外の展示を受け入れる巡回展は初めての試みらしい。

なお、この展覧会はもともと窓学10周年を記念し、東京のスパイラルで開催した「窓学展」が原形であり、ジャパンハウスの巡回枠に採択されたことを受け、海外向けに内容を再編したものだった。もっとも、開催期間がコロナ禍でロサンゼルス、サンパウロ、ロンドンの3会場とも、窓学チームは現地入りができず、オンラインでの設営となった。ロサンゼルスにいたっては、期間中に開館もできなかったため、完全に無観客の展示である(ただし、オンライン上では詳しく鑑賞可能)。したがって、ヴィラム・ウィンドウ・コレクションでの延長戦がなければ、「Windowology」展の現場を海外で目にすることはできなかった。

さて、スパイラルのときからただの学術発表にならないよう、現代アートを組み合わせていたが、巡回展では津田道子に参加を依頼している。会場ごとに異なるインスタレーションを行ない、コペンハーゲンでは展示への導入として、フレームと鏡と映像による迷宮的な空間を出現させた。展示の内容は以下の通り。環境の面からは東工大の塚本研による手仕事の作業場における開口部と小玉祐一郎による近代建築のシミュレーション、表象の視点では東北大の五十嵐研による漫画における窓(『サザエさん』)と物語の窓、そして現代住宅の窓については、ジェレミー・ステラが撮影した写真群を用いている。日本建築の特徴を示すものとしては、建築家の言葉を壁に記したほか、早稲田大の中谷研による掬月亭の映像を流し(可動の開口部によって、空間の表情が劇的に変化)、リアルサイズに拡大した起こし絵図によって再現され、内部に入ることもできる別名「十三窓席」の擁翠亭を展示のハイライトとした。ヴィラム・ウィンドウ・コレクションがモノとしての窓に焦点をあてるのに対し、「Windowology」展は窓がどのように人々のふるまいに影響を与えたか、またメディアにおいてどのように表象されたか、といったアプローチを導入したことに違いが認められるかもしれない。



津田道子の展示




前川國男自邸、聴竹居などの環境シミュレーション




漫画に描かれた窓、手仕事の環境における開口




ジェレミー・ステラが撮影した現代日本の住居




建築家の言葉、物語の窓




茶室の1/1インスタレーションと起こし絵図




茶室の内部


Windowology: New Architectural Views from Japan

会期:2022年9月18日(日)~2023年2月28日(火)
会場:ヴィラム・ウィンドウ・コレクション(Maskinvej 4, 2860 Søborg, Denmark)

2022/09/15(木)(五十嵐太郎)

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