artscapeレビュー

BRIAN ENO AMBIENT KYOTO

2022年10月01日号

会期:2022/06/03~2022/09/03

京都中央信用金庫 旧厚生センター[京都府]

ブライアン・イーノの大規模なインスタレーション展ということであったが、いずれの作品も基本的には光源か音源による観賞上の正面性が強く存在する。なので、観賞者は暗闇の中に浮かぶ映像や音をどこかのソファーに座ったり、定位して体験することになる。というか、暗いのでたくさんいる人の中を無闇に歩いて回るわけにはいかない。とにかく人が多かった。

多くの人を安全に移動させるために黒いTシャツを着たスタッフたちがライブ会場のように黙々と誘導し続ける。ジョセフ・アルバースのように設計の色彩配色がLEDで転々と配色を変えながら光る《Light Boxes》であったり、スクリーンセーバーのように明確な形象を結ぶことのない映像である《77 Million Paintings》や、ある人の顔を見ていると思いきや気付いたら違う人になっていた! という《Face to Face》のように、つねに捉えどころがない映像、そして盛り上がりも溜めもない音は、いくらでも体験していられる。とりわけ、背もたれのある立派なソファーが並んでいた《77 Million Paintings》では、子供部屋に流れるプラネタリウムのように作品は人々の眠気をさそっていた。そうではあったのだが、わたしは自分の後に待ち構える次なる観賞者のことを背中に感じ、ある程度の作品の構造的なるものを把握したような気がしたら、そそくさとその場を後にした。睡眠という観賞は、見ることも聞くことも放棄しながらも、ほかの観賞者の存在を忘れて作品に身を任せた結果だなと思い、羨ましく感じた。

入場料は平日は2,000円、土日は2,200円でした。なお、本イベントの収益の一部はイーノが設立した気候変動問題の解決を目的とした慈善団体「EarthPercent」へ一部が寄付されるそうです。


公式サイト:https://ambientkyoto.com/


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