artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
新解釈・花鳥風月
会期:2016/06/11~2016/07/23
Sansiao Gallery[東京都]
ついでに隣のSansiao Galleryも見る。ニキ・ド・サンファルの立体もあれば北斎の浮世絵もある。いったいどういう選択だろうと思いながら見ていたら、ヘタクソな風景画の隣にポロックのドリッピング絵画が並んでいたので驚いた。なんという落差。そしてもっと驚いたのは、風景画のほうがじつはポロックの1936年の作品で、ドリッピング絵画はマイク・ビドロのアプロプリエーションだったこと。一気に逆転、まいりました。
2016/07/23(土)(村田真)
宮間夕子個展 神秘も狂気も太陽の渦
会期:2016/07/09~2016/08/06
マサタカコンテンポラリー[東京都]
東京駅にほど近いマサタカコンテンポラリーへ。以前、別のギャラリーが入っていたビルの地下だが、降りていくとSansiao Galleryというのがあって、一瞬間違えたかなと思ったら、その奥に宮間夕子の作品と本人を発見。宮間は何度かBankARTのスタジオで制作したことがあり、そのとき描いていた幅4メートル近い大作を中心に展示している。彼女が描くのは魔女ランダのようなアジアの神や精霊であり、その神秘的なエネルギーであり、その力を呼び起こす長い髪や装身具だ。綿布に白亜を塗ってフラットにした上に、油彩とテンペラで丁寧に描いている。奥の細長い部屋には、サラッと描いた下描きの線描を赤い紙にコピーして切り抜いたものが数百枚、壁に貼られている。これを見ると達者な線描であることがわかる。
2016/07/23(土)(村田真)
安田佐智種 VOID
会期:2016/07/04~2016/07/30
ベイスギャラリー[東京都]
今日は歩いて日本橋界隈のギャラリー巡り。まずは茅場町のベイスギャラリーへ。画面の中心からビルが放射状に広がってる写真で、よく見ると東京、パリ、ニューヨークなど大都市の俯瞰写真であることがわかる。スカイツリーやエッフェル塔など各都市のいちばん高い場所から周囲を撮り、コンピュータで画像をつなぎ合わせた写真だが、パノラマ写真と違って360度だけでなく、その下の半球状の視野までほぼカバーしている。地図と同様、球面を平面に置き換えるとズレが生じてくるが、そこはパッと見わからないようにデジタル処理してある。正方形の画面もあるが、大きな紙を2、3枚つなげてコラージュ風にした作品もあり、いわばホックニーのフォトコラージュのデジタル版だ。地図好きにはたまらない写真。もう1点、古代の廃墟を真上から空撮したような幅4メートルを超す大作がある。これは福島県の被災地で、津波によって土台だけ残った家の跡を歩きながら、目の高さから真下を撮ってつなげたもの。床板、柱の基底、バスタブ、便器などが確認でき、ときおり作者の靴先が写っている。何十軒もの家の跡をつなげているので、全体で巨大な廃墟のように見えるのだ。これはお見事。
2016/07/23(土)(村田真)
竹岡雄二 台座から空間へ
会期:2016/07/09~2016/09/04
遠山記念館[埼玉県]
本命の竹岡雄二作品は、広大な、というより廊下で細長くつながった屋敷内5カ所と庭に1点、置かれている。土間にガラスの容器で覆われた金属板、正方形の和室に白い立方体、縁側にブロンズ板の両端を内側に湾曲させた台座、庭に高さ130センチほどの石柱、などだ。20世紀に彫刻から台座が失われた理由は、作品自体が抽象化して台座との差異化がつかなくなったことのほかに、彫刻作品が美術館で鑑賞されるようになったからでもある。もともと台座は現実空間と彫刻とのあいだのクッションの役割を果たしていたが、美術館のとりわけホワイトキューブの展示室は、それ自体が現実空間とは隔絶した台座の役割を果たすからだ。だから美術館で見た竹岡の「台座」は、一種のミニマル彫刻として立ち現われたのだ。では、もう人が住んでいないとはいえ、この現実空間の屋敷内に置かれた「台座彫刻」はどのように見えただろう。意外なことに(いや当然のように、というべきか)美術館以上に作品としての存在感を主張するように感じられたのだ。それはおそらく空間的に開けた和風建築だからかもしれない。これが隙間のない密閉された洋風建築だったらまた違う印象を与えたはずだ。いやあ苦労して見にきてよかった。
2016/07/18(月)(村田真)
ガラスと土の造形
会期:2016/07/02~2016/09/25
遠山記念館[埼玉県]
「竹岡雄二展」を見るため川越からバスに乗り、牛ヶ谷戸というネーミングからして田舎なバス停で降り、周囲は田園なので日差しをさえぎるものもない炎天下、田んぼのなかをとぼとぼ途中2度ほど道を間違えながら、また同好の士と合流しつつ30分ほど歩いて遠山記念館に到着。そういえば前に来たときはタクシーだったな。同館は美術館とお屋敷に分かれていて、まず美術館を見てから遠山邸内の竹岡作品を鑑賞という順路になっているのだが、これは結果的に好都合だった。汗びっしょりだったので、クーラーの効いた美術館内は天国じゃ。さすがに1930年代に建てられた純和風の屋敷のほうにはクーラーは期待できないからな。美術館では「ガラスと土の造形」を開催中で、中東からヨーロッパ、南米、中国、日本までの陶器、ガラス器、モザイク画などを展示していたが、思考停止のまましばらく身体を冷却してから出た。
2016/07/18(月)(村田真)