artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

─歿後20年─青山義雄展

会期:2016/04/03~2016/06/05

茅ヶ崎市美術館[神奈川県]

「この男は色彩を持っている」とマティスが認めた日本人画家、だそうだが、たまたま画廊でこの日本人画家の絵を見て感想を述べただけで、マティス本人も覚えてないんじゃないか。青山義雄は戦前に滞仏し(マティスに「認められた」のはこのとき)、戦後も精力的に地中海周辺に出かけ、102歳の天寿を全うした画家。たしかに美しい色彩の絵もあるけど、すでにマティスやボナールがいるからねえ。しかも戦前の絵は10点ほどしかなく、残る60点は戦後の作品。特に80年代以降(85歳くらいから)が半数を占める。べつに年寄りの作品が悪いとは思わないが、年老いたら昔と同じように描けるわけがない。個人的にはもっと色彩も形態も破綻してグダグダになった絵も見たかった。

2016/04/10(日)(村田真)

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前田哲明の彫刻

会期:2015/12/05~2016/04/10

平塚市美術館[神奈川県]

溶断した鉄板を円筒や円錐状に丸めて林立させた彫刻を、館内のロビーなどに展示している。表面には荒々しいテクスチュアが施され、一見重厚きわまりないが、実際には空洞だらけで意外と軽やかな印象もある。前田には宙づりの作品もいくつかあるが、この重そうで軽やかというチグハグさが彼の彫刻の特徴かもしれない。

2016/04/10(日)(村田真)

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ここにもアートかわぐち

会期:2016/03/19~2016/05/14

川口市立アートギャラリー・アトリア+キュポ・ラ+川口市立グリーンセンター[埼玉県]

川口市のギャラリー・アトリア開館10周年記念展。ギャラリー内だけでなく、駅前のビルや市内の植物園にも計17人の作品を点在させている。まずは駅前ビルのキュポ・ラ。若い人には伝わらないだろうけど、川口といえばかつて鋳物が有名で、「キューポラ(溶解炉)のある街」として知られていたことから命名された。そのキュポ・ラの7階は映像・情報メディアセンターになっていて、壁には杖ばかりを撮った大和由佳の写真が並び、空きスペースには佐藤裕一郎による巨大画面の抽象的な日本画が鎮座、といったようにビル全体で8人の作品が展示されている。また、車で20分ほど走った郊外のグリーンセンター内にあるシャトー赤柴には、サボテンを思わせる青木邦眞の彫刻と、堀口泰代の帆船を載せたようなカツラを設置。わざわざこれだけを見に行くのはツライが、グリーンセンターは種々の花々が咲いて半日は遊べる。あとはアトリアでの展示で、大半はオーソドックスな絵画や彫刻だが、特筆すべきは、入口上のひさしに送風管のような銀色のチューブをとりつけた遠藤研二の作品。言われなきゃ気づかないが、言われても作品だと気づかない人もいるに違いない。これってひょっとして、配管をむき出しにしたポンピドゥー・センターのパロディ? 出品作家はいずれも、アトリアで毎年開かれてきた「川口の新鋭作家展」に出したことのある、つまり地元ゆかりの作家たち。川口には先にも挙げた鋳物をはじめとする地域資源があり、また地の利にも恵まれているため、掘り起こせばアートのネタにはこと欠かない。予算と人手とやる気があれば、もっと大がかりに地域アートが展開できるだろう。

2016/04/09(土)(村田真)

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GAME ON ゲームって なんで おもしろい?

会期:2016/03/02~2016/05/30

日本科学未来館[東京都]

お台場に「ガメオン」現われる! と思ったら「GAME ON」だったって話。春休みの息子12歳(ゲーム中毒)を連れて、なるべくすいてそうな雨模様の月曜の午前中に訪れるも、みんな考えることは同じ、100メートルを超す長蛇の列で待ち時間は40分だと。晴れた休日だったら倍は混んでいただろう。展示は70年代の化石のようなゲームから現在まで約半世紀の歴史をたどり、実際に体験するもの。ぼく自身いまはゲームにはまったく興味ないが、サラリーマンになりたての70年代末、会社の近くにスターウォーズ系の敵機を撃ち落とすゲーム機が導入され、昼休みに夢中になったことがある。やがてブロック崩しやインベーダーゲームが幅をきかせるようになって興味を失ったが、その最初にハマったゲームを探したら、どうやら「スペースウォーズ」らしいことがわかった。なつかしい。企画展を出たら、隣のシンボルゾーンでアシモくんの実演をやっていた。ひざが「く」の字型に曲がってはいるが、走ったり後ずさりしたりケンケン(片足飛び)したり、よく進化したものだと感心。最後は手話も披露して人間らしさ(というより人間への隷属性)をアピール。これ以上進化する(させる)と危険水域に入っていくんじゃないか。

2016/04/04(月)(村田真)

鈴木紗也香 「額縁の中を愛おしく」

会期:2016/04/02~2015/04/17

高架下スタジオSite-Aギャラリー[神奈川県]

一見サラリと薄塗りで日常的な情景を描いたいまどきの絵画だが、注意深く見ると、絵画の枠組みを強調するかのような窓枠とか開口部とか鏡とか画中画などが描かれ、絵画であることの自覚を高めている。これらは矩形の画面を強調するだけでなく、絵画のさらに向こうにも世界が広がってるかもしれないことを暗示するフレームでもあるだろう。さらに、ギャラリーの柱にマティス風の切り絵を貼るなど、現実と絵画空間との境界にも踏み込もうとしている。絵画意識の高い展覧会。

2016/04/02(土)(村田真)