artscapeレビュー

モザイク展2015

2015年10月15日号

会期:2015/09/15~2015/09/27

横浜市民ギャラリーあざみ野[神奈川県]

モザイク展の賞の審査を頼まれた。モザイクについては無知だけど興味があったので引き受けた。興味があったのは、まずモザイクは本来「不動産美術」であるにもかかわらず、ここではタブロー、つまり「動産美術」として展示されること。その整合性を確かめてみたかったというのがある。また、モザイクは色素を並べてひとつのイメージを形成する点で、点描画やデジタル画にも通じること。さらに、ポルノにおけるモザイク(じつはモザイクといえば一般にこれがいちばん知られている)のように、はっきり見せるのではなく曖昧にボカすためにも使われること。ほかにも、学校の卒業制作でしばしば見かけるように共同作業によるところが大きいこと、などだ。つまりモザイクは古典的な技法であると同時に、きわめて現代的な問題をはらんだメディウムでもあると思う。そんな視点で選んでみた。大賞は、街の遺跡を俯瞰したような図柄の岩田英雅による作品。画素の一つひとつが1軒の家あるいは1個の石材にも見え、不動産としての記憶を宿していると感じられたからだ。二席は、高倉健の肖像をスーパーリアリズム風に描き、裏から光を当てた山本真平の作品。これは現代のデジタル表現にもつながるうえ、ほかに類似作品がないため選んだ。三席は、白い小さな大理石を矩形の画面にびっしり埋め込み、その脇にモノクロ写真を添えた妙川幸子の作品。作者の意図を無視していえば写真が余計で、白い大理石だけだったら大賞争いに加わっていただろうと思う。つまりミニマルな純粋モザイク画ってわけだ。以下、佳作と奨励賞は略。モザイクでなにかを表現するのではなく、モザイクを表現してほしいと思う。

2015/09/14(月)(村田真)

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