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鳥獣戯画──京都 高山寺の至宝

2015年05月15日号

会期:2015/04/28~2015/06/07

東京国立博物館 平成館[東京都]

待望の「鳥獣戯画展」だが、前半は絵巻を所有する高山寺のコレクションや明恵上人にまつわる作品を延々と紹介。後半いよいよ鳥獣戯画の登場かと思いきや、まずは《華厳宗祖師絵伝》から。いやこれも国宝だけあってなかなか見ごたえのある絵巻だ。新羅の義湘と元暁は仏法を学ぶため唐に向かい、長安で義湘は善妙という娘に一目惚れされる。義湘の帰国を知った善妙は海に身を投げて龍に変身、義湘を乗せた船を荒波から守るという、ちょっとうれしいような迷惑なようなストーカーまがいのストーリーだが、見どころはなんといっても荒波のなか稲妻を放ちながら進む龍の姿。この「義湘絵」は前期のみで、後期は「元暁絵」の出品という。で、いよいよ《鳥獣戯画》のご開陳だが、よく知られてるようにこの絵巻は甲乙丙丁の4巻からなり、いちばん有名なウサギやカエルが遊んでる図は最初の甲巻。ところが展示は逆に丁から始まり甲が最後になっている。「鳥獣戯画展」なのに、われわれが知ってる絵は最後の最後まで行かないと見られないのだ。しかも最後の部屋は行列用のスペースまでたっぷりとってあって、どれだけ入れるつもりやねん。たぶん鳥獣戯画を見に行ったのに行列に耐えきれず、ウサギもカエルも見ないで帰ったという子が続出するに違いない。そのため展示ケースの上に部分図を拡大コピーして提示しているが、これ見てホンモノを見た気になる子は多いだろう。ちなみに絵巻きは各巻とも前期は前半のみ見せ、後半はコピーを展示しているが、修復したばかりのせいか、ホンモノもコピーみたいに見える。

2015/04/27(月)(村田真)

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