artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

モダンとコンテンポラリー─1970年代を巡って

会期:2014/09/20

紙パルプ会館3階会議室[東京都]

もの派をはじめ70年代美術の見直しの気運が高まるなか開かれたシンポジウム。スピーカーは70年代にデビューした鷲見和紀郎と高木修、埼玉近美で「70年─物質と知覚」を企画した平野到、モデレーターは東京近美の松本透。話は70年代の美術を巡ってというよりもの派を巡って進行し、当時まだ影響力のあった美術ジャーナリズムや批評の問題とか、アングラやサブカルチャーとの関係とか、各地に建ち始めていた公立美術館の話題とかにはほとんど触れられなかった。これはいかにもの派が70年代のトピックを独占していたか、いいかえれば、いかに70年代の美術が狭い世界だったかということを物語ってもいる。ただ貸し画廊に関しては鷲見さんが触れていた。「当時は貸し画廊が美術を支えていたが、レンタル料が高く作品に金が使えなかった。これがほんとのアルテポーヴェラ(貧しい芸術)」なんてね。しかしこれは冗談ではなく、もの派やポストもの派の作品素材に木材や石が多かったのは、安く手に入り使い回しができるからだろうし、空間を一時的に作品化するインスタレーション形式が多かったのは、貸し画廊で発表し、売れる見込みがなかったからにほかならない。実際アルテポーヴェラだったのだ。そんな経済の話も出なかったなあ。

2014/09/20(土)(村田真)

あるアホの一生─田村画廊ノート─

会期:2014/09/15~2014/09/20

ステップスギャラリー[東京都]

70年代に絶大なる信頼を誇った貸し画廊が神田にあった。田村画廊だ。そのオーナーが山岸信郎さん(2008年に死去)。後に真木画廊と駒井画廊を近くに開き、田村は移転したり真木と合併したりしたのでややこしいが(私事だが、80年代にこれらの画廊に敬意を表して「駒井真木」のペンネームを使ったことがある)、とにかく70~80年代に台頭したもの派、ポストもの派、ニューウェイヴの連中で山岸さんのお世話にならなかった人はいないといっていいほど「大きな人」だった。貸し画廊が単に作家から金をとって場所を貸す不動産屋ではなく、作家を育て、助言し、企画展に推薦し、海外にも紹介するという大切な役割を担うオルタナティヴなインスティテュートであったことは、山岸さんがいなければ認識されなかったに違いない。そんな山岸さんと田村画廊を巡る資料展。出品は安斎重男さんの写真を中心に、山岸さんの自筆原稿のコピー、3つの画廊の展覧会歴、カタログなど。

2014/09/20(土)(村田真)

MAMプロジェクト022 ヤコブ・キルケゴール

会期:2014/09/20~2015/01/04

森美術館[東京都]

福島の自然を山水画のように縦長の画面に映し出すサウンド・ビデオ・インスタレーション。また福島ネタかよ。

2014/09/19(金)(村田真)

リー・ミンウェイとその関係展

会期:2014/09/20~2015/01/04

森美術館[東京都]

台湾出身でニューヨーク在住のアーティスト、リー・ミンウェイの個展。と思ったらジョン・ケージ、イヴ・クライン、小沢剛らの作品もある。リーひとりじゃ埋めきれなかった、というわけではなく、リーの作品をよりよく理解するための助っ人として参加してるようだ。裏返せばリーの作品だけじゃ理解に苦しむってことらしい。彼の作品は「リレーショナルアート」とか「関係性の美学」とか呼ばれるもので、観客が参加することで初めて成り立つ作品だが、作品を完成させることより、そのプロセスで人々と会話したり、さまざまな関係性を築くことを目的とする。たとえば《プロジェクト・繕う》では、観客が持ち込んだ衣類をアーティストやホストが会話しながら繕い、壁面の糸とつなげていく。この場合、衣服を繕うことが目的ではなく、繕う行為をきっかけに相手とコミュニケーションし、そのつながりを視覚化してみせることが重要なのだ。また《ひろがる花園》は、細長い容器に差した花を観客が受け取り、それを帰り道に見知らぬ人にあげるというもの。こうして未知の人と知り合い、友だちの輪が広がっていく……と書きながらむなしい気分に襲われる。いったいだれがそんなゲームに参加するのだろう。見知らぬ他人とコミュニケーションしたい人間なんているのか? よっぽど寂しいのかノーテンキなのか、いずれにせよぼくはお友だちになりたくないなあ。まあそれは趣味の問題だからいいとして、興味深いのはこういう「作品」を美術館で紹介する時代になったということだ。そもそもリレーショナルアートなんてものは、美術館という制度内では実現できない生のコミュニケーションを求めて外の世界に広がりを見せてきたはず。それがちゃっかり美術館に収まってしまうというのはいかがなものか。だいたい美術館でのコミュニケーションなんて出来レースみたいなもんだし。こんな展覧会を企画した美術館も美術館だが、そんな話に乗ったアーティストもアーティストだ。ま、それだけにチャレンジングな企画だっていえないこともないけど。

2014/09/19(金)(村田真)

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小西紀行「人間の行動」

会期:2014/08/23~2014/09/27

アラタニウラノ[東京都]

相変わらずシャキシャキッと一筆書きみたいに描かれた人物を中心に、背後に水平(または斜めの)線が走り、ベーコンの絵のように室内空間であることが暗示される。以前は背景は黒一色が多かったような気がするのに、画面の隅に壁掛け時計や光の射す窓といった情景描写も入ってきた。人物も椅子に座る人、3人くらい重なる人、寝転ぶ人などポーズが多様化している。この先どこへ行くのか、どこまで行くのか。

2014/09/18(木)(村田真)