artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

Unknown Nature

会期:2014/08/22~2014/09/03

アユミギャラリー+アンダーグラウンド+早稲田スコットホールギャラリー[東京都]

神楽坂と早稲田の計3会場で開かれていて、8月には神楽坂の2会場しか見られなかったので、今日は早稲田会場に行く。神楽坂のほうはあまり印象に残る作品はなかったなあ。強いていえば、モデルとともにヌードになって一緒に撮影した鷹野隆大の小さなポラロイド写真が、投げやりにも見える素っ気ない展示ともども惹かれるものがあった。早稲田では、たぶん初めて見る小島章義の作品が新鮮。キャンバス地をさまざまなかたちに結んで絵具を塗ったものを、壁にかけたり床に置いたりしている。ちょっと雑だが、これらも「絵画」に違いない。現代版のシュポール・シュルファスか。下辺から足を生やしたタブローもある。タブローが「動産」であることを強調しているようで、思わず買いたくなるが手が出ない。足が出るからな。

2014/09/02(火)(村田真)

カラー・ミー・ポップ──松山賢

会期:2014/08/27~2014/09/08

高島屋新宿店10階美術画廊[東京都]

チューブから絞り出された絵具を載せた白い小皿を真上から描いた「絵の具の絵」シリーズを中心とする展示。約10センチ四方の小品は前にも見たし、1点もってるけど、縦横5列ずつ計25枚の小皿を並べた大作は初めて。各皿の周囲はそれぞれの皿に載ってる絵具の色に円形に塗られていて、つまり正方形の画面にさまざまな色の円形が整然と並んでいるので、抽象画のようにも見えるし、曼荼羅を思い出したりもする。ほかにも人体(珍しく男性ヌード)や風景、花の絵の表面に装飾模様を盛り上げた作品もあるが(それぞれのモチーフと上に盛られた模様は関係している)、初めて見るのは、ロウソクを描いた絵。もっと正確にいえばロウソクの写真を描いた絵なのだが、その表面を円形の複雑なパターンに彫っている。この円形パターンもロウソクの焔の輝きから導き出されたものだろうけど、これもどこか曼荼羅を思い出させ、ローソクの火とも相まって宗教的な雰囲気を醸し出している。進化(深化・神化)してるなあ。

2014/08/30(土)(村田真)

TWS-Emerging 2014

会期:2014/08/09~2015/02/01

トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]

これまでTWS本郷で開かれてきた「エマージング展」が渋谷に移った。オフィスとレジデンス施設も青山から撤退したし、都知事が交代してからいろいろ変動があるようだ。ともあれ今回は絵画2人、立体1人の3人展。清水香帆は、競技場のようにも見える左右対称や回転対称の幾何学的形態を、少しずらして薄塗りで描いている。衣真一郎は反対に、風景らしきものをコテコテと厚塗りで仕上げている。本田アヤノは、いかにもこの世にひとつしかなさそうなポップで表現主義的な立体を、四つ同じようにつくって並べている。みんなそれぞれ違うけど、みんなちょっと表現主義的で、抽象とか具象とかにわけられないし、みんな少しずつ既視感があって、なんとなくみんな似てる。

2014/08/29(金)(村田真)

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たよりない現実、この世界の在りか

会期:2014/07/18~2014/08/22

資生堂ギャラリー[東京都]

うっかりしていた、今日が最終日だった。荒神明香とwahドキュメントらによるチーム「目」の展示。夕方、駆けつけてみたら、地下のギャラリーにいたる入口はドアで閉ざされ(普段ドアなんてない)、その前に行列ができている! こんなこと初めて。フェイスブックで話題になってるのかしら。「点検口」と記されたドアの前に立つスタッフが5人ずつ招じ入れている。階段からギャラリーまでのアプローチには工事中のようなインスタレーションが施され、これは期待できそう。ギャラリー空間は見事にホテル(の廊下)に変容していた。コの字型の廊下の左右に客室のドアがついていて、どれもノブは回るけど開かない。突き当たりの奥の部屋だけドアが開いていて、入るとベッドからテーブルから照明から客の服や荷物まで、客室を完璧に再現している。驚いたのは、壁の姿見から人が出てきたこと。鏡だと思ったら穴が開いてるだけで、向こう側に左右対称の部屋をしつらえているのだ。これはスゴイ。いやこれだけで終わってりゃスゴイで済むんだけど、まだある。廊下の途中に数段の階段があり、上ってみると、暗闇の中空に薄ぼんやりと発光する球体が浮かんでる。これを月か土星に見立てると風流かもしれないが、幸か不幸か2、3日前に広島市上空に赤い球体が浮かぶ模型を見てきたばかりの者としては、もっと恐ろしいものを連想せざるをえない。さらにここが地下に掘られたギャラリーであることを思えば、この地下ホテルが核シェルターのように見えてこないでもない。限りなく連想が膨らむ力作でした。

2014/08/22(金)(村田真)

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ランドマーク・プロジェクトV──松本秋則

会期:2014/08/01~2014/10/31

横浜市庁舎1階[神奈川県]

関内駅前に建つ横浜市庁舎の吹き抜けロビーに、松本秋則による竹と紙のサウンドオブジェが据えられている。風力ではないけど、コンピュータ制御でもない、アナログなタイマーを使った装置から発せられる音は、フォンフォンフォン、シャラララーンと風鈴のように涼しげ。デジタル音にはない癒しの効果があるのだろう。その下のベンチにはヒマそうなおっさんたちが気持ちよさげにたむろってるが、ひょっとしたら「るっせーなー」と思ってるかもしれない。

2014/08/22(金)(村田真)