artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

中村屋サロン──ここで生まれた、ここから生まれた

会期:2014/10/29~2015/02/15

中村屋サロン美術館[東京都]

新宿中村屋といえば、中村彝の作品があるので学生時代から2、3回来たことがある。でも貧乏学生にはサロンの雰囲気がなじめず、作品だけ見てそそくさと帰ったなあ。その中村屋本店がビルを建て替え、3階に美術館を開設。開館記念展としておよそ1世紀前に中村屋に集った美術家たちの作品を展示している。出品は、中村屋サロンのきっかけとなった荻原守衛の《坑夫》《女》をはじめ、高村光太郎の《手》や《自画像》、中村彝の《小女》、鶴田吾郎の《盲目のエロシェンコ》、中原悌二郎の《若きカフカス人》、会津八一の書まで、彫刻と油彩が中心。なにか日本の近代美術の青春時代を見るような懐かしさと、なぜか気恥ずかしさも感じる。

2014/10/22(水)(村田真)

横浜市民ギャラリー クロニクル 1964-2014

会期:2014/10/10~2014/10/29

横浜市民ギャラリー[神奈川県]

関内駅前にあった横浜市民ギャラリーが野毛山に移転、その再オープンを記念する展示。市民ギャラリーが桜木町駅前にオープンしたのはちょうど50年前、東京オリンピックの開かれた年で、市長は飛鳥田一雄だった(といっても知らない人が多いだろうなあ)。飛鳥田は現代美術館構想を抱いていたらしいが、とりあえず市民ギャラリーを開設し、74年には関内駅前に移転。展覧会の大半はレンタルだったが、毎年ひとりの美術評論家がキュレーターを務めるアニュアル展「今日の作家展」を中心に、80年代までは首都圏の現代美術の拠点のひとつに数えられていた。でも横浜美術館ができてからは(バブル崩壊もあって)明らかに失速したけどね。展示は、横浜港やベイブリッジ、港の見える丘公園など横浜ゆかりの地を描いた風景画や漫画、草間彌生、斎藤義重、高松次郎ら「今日の作家展」出品作家の版画など(菅木志雄のみインスタレーション)。なぜか1点だけ岡本太郎の油絵もあって、所在なげだ。ま、作品を見てもらうというより、新しいスペースのお披露目ですな。今回移転した場所を地図で調べると「横浜市職員会館」となっている。これをギャラリーに改装したのね。どうりで天井が低いわけだ。桜木町駅や日ノ出町駅から徒歩10分程度だが、坂の上にあるので年寄りには大変じゃわい。

2014/10/21(火)(村田真)

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フランシス真悟「Vast and Vivid」

会期:2014/10/17~2014/12/13

ミサシンギャラリー[東京都]

白い壁2面に青い大作が3点。うち2点は画面中央に白い水平線が入り、1点は上下に余白がとられ、下方に赤い線が引かれている。青いといっても紫に近い深い青で、赤系も含めてさまざまな青を何度も塗り重ね、波のような筆跡をつけていることもわかる。タイトルどおり、広大で鮮明なイメージだ。プレスリリースによると、「生まれ育ったカリフォルニアの広大な風景や鮮やかな光が原体験として色濃く投影されて」いるそうだが、同じカリフォルニア出身で同じく青を多用するナントカチャン・ラッセンと、どこでどう違ったのかとふと思った。

2014/10/14(火)(村田真)

プロジェクトN 高畠依子

会期:2014/10/18~2014/12/23

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

キャンバスに細く絞り出した絵具を縦横に重ねて、花柄や抽象パターンを描いている。つまり絵具を糸としてキャンバスの上に織物を被せてる感じ。キャンバスも麻の織物だから二重の織物といえるし、多色で重なっていればテレビ画面のようにも見えてくる。これはおもしろい。でも大作になればなるほど高度な技術と莫大な労力に気をとられてしまいがちなこと、またパースをつけたものや糸がほころびたようなものなど、ややトリッキーに走りがちなことが残念。

2014/10/14(火)(村田真)

抽象の楽しみ

会期:2014/10/18~2014/12/23

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

寺田コレクションから大竹伸朗、郭仁植、加納光於、桑山忠明、白石由子、菅井汲、瀧口修造、堂本尚郎、難波田龍起、白髪一雄、野見山暁治、村上友晴、山田正亮、吉原治良、李禹煥ら約30人による63点の抽象作品の展示。出品作家の名前を連ねたのは、彼らに共通点があるかどうか確かめたかったから。もちろんみなさん現代の抽象作家だけど、美学的にはそれほど共通項があるとは思えない。つまり寺田さんは自分の趣味で買ったというより、不特定多数に見せることを前提になるべく広く浅く(難波田は例外)集めたことがわかる。はっきりいって、だから見てておもしろくない。

2014/10/14(火)(村田真)