artscapeレビュー
モダンとコンテンポラリー─1970年代を巡って
2014年10月15日号
会期:2014/09/20
紙パルプ会館3階会議室[東京都]
もの派をはじめ70年代美術の見直しの気運が高まるなか開かれたシンポジウム。スピーカーは70年代にデビューした鷲見和紀郎と高木修、埼玉近美で「70年─物質と知覚」を企画した平野到、モデレーターは東京近美の松本透。話は70年代の美術を巡ってというよりもの派を巡って進行し、当時まだ影響力のあった美術ジャーナリズムや批評の問題とか、アングラやサブカルチャーとの関係とか、各地に建ち始めていた公立美術館の話題とかにはほとんど触れられなかった。これはいかにもの派が70年代のトピックを独占していたか、いいかえれば、いかに70年代の美術が狭い世界だったかということを物語ってもいる。ただ貸し画廊に関しては鷲見さんが触れていた。「当時は貸し画廊が美術を支えていたが、レンタル料が高く作品に金が使えなかった。これがほんとのアルテポーヴェラ(貧しい芸術)」なんてね。しかしこれは冗談ではなく、もの派やポストもの派の作品素材に木材や石が多かったのは、安く手に入り使い回しができるからだろうし、空間を一時的に作品化するインスタレーション形式が多かったのは、貸し画廊で発表し、売れる見込みがなかったからにほかならない。実際アルテポーヴェラだったのだ。そんな経済の話も出なかったなあ。
2014/09/20(土)(村田真)