artscapeレビュー

たよりない現実、この世界の在りか

2014年09月15日号

会期:2014/07/18~2014/08/22

資生堂ギャラリー[東京都]

うっかりしていた、今日が最終日だった。荒神明香とwahドキュメントらによるチーム「目」の展示。夕方、駆けつけてみたら、地下のギャラリーにいたる入口はドアで閉ざされ(普段ドアなんてない)、その前に行列ができている! こんなこと初めて。フェイスブックで話題になってるのかしら。「点検口」と記されたドアの前に立つスタッフが5人ずつ招じ入れている。階段からギャラリーまでのアプローチには工事中のようなインスタレーションが施され、これは期待できそう。ギャラリー空間は見事にホテル(の廊下)に変容していた。コの字型の廊下の左右に客室のドアがついていて、どれもノブは回るけど開かない。突き当たりの奥の部屋だけドアが開いていて、入るとベッドからテーブルから照明から客の服や荷物まで、客室を完璧に再現している。驚いたのは、壁の姿見から人が出てきたこと。鏡だと思ったら穴が開いてるだけで、向こう側に左右対称の部屋をしつらえているのだ。これはスゴイ。いやこれだけで終わってりゃスゴイで済むんだけど、まだある。廊下の途中に数段の階段があり、上ってみると、暗闇の中空に薄ぼんやりと発光する球体が浮かんでる。これを月か土星に見立てると風流かもしれないが、幸か不幸か2、3日前に広島市上空に赤い球体が浮かぶ模型を見てきたばかりの者としては、もっと恐ろしいものを連想せざるをえない。さらにここが地下に掘られたギャラリーであることを思えば、この地下ホテルが核シェルターのように見えてこないでもない。限りなく連想が膨らむ力作でした。

2014/08/22(金)(村田真)

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