artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

木梨憲武×20years

会期:2014/05/20~2014/06/08

上野の森美術館[東京都]

美術館前は長蛇の列だったが、たまたま招待券を持ってたんでスルーパス。館内もすごく混んでいて、VOCA展のオープニングの10倍はいたかな。平日の午後なのに、しかも芸術家ではなく芸人の個展なのに。いや芸人の個展だから混んでたんですね。でも思ったより悪い展覧会ではなかった。作品は絵画が中心で、樹木や植物から派生した抽象パターン、アルファベット、天体らしきもの、各地を訪れたときのスケッチ、絵具チューブを集積した立体、デザイナーとコラボレーションしたCGなど多彩だ。描きたいものを自由に描く──言うはやさしいが、描いてるうちによく見られたい、高く評価されたいと思い始め、妙に技巧に走ったり、二科展に出したりするのが芸能人の陥りやすい落とし穴だ。ちやほやされてついその気になり、みずからハードルを上げてしまい、自由に描けなくなる。こういうのを本末転倒という。もちろん木梨もただ無邪気に描いてるわけでなく、見る人の反応は考えているだろうけど、初期の「描く喜び」を忘れていないことは作品から伝わってくる。なによりウザい上昇志向や勘違いがなく、「これでいいのだ」と納得しているところが清々しい。

2014/06/04(水)(村田真)

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「新印象派──光と色のドラマ」記者発表会

会期:2014/06/04

東京都美術館講堂[東京都]

壇上には東京会場の都美術館の真室佳武館長と、大阪会場のあべのハルカス美術館の浅野秀剛館長が並んだが、キマジメにごあいさつをする真室館長に対し、浅野館長は展覧会そっちのけであべのハルカスとハルカス美術館の話ばかり。せっかく上京したんだから宣伝しとかなくちゃね。肝腎の展覧会については都美術館の学芸員から解説があったが、総監修も監修もフランスの美術史家が務めてるため、通り一遍の紹介。もちろんスーラの《アニエールの水浴》も《グランド・ジャット島の日曜日の午後》も来ないけど(後者の部分的習作は来る)、それでもスーラだけで計7点、ほかにシニャック、エドモン・クロス、ヤン・トーロップらの作品が見られるし、「科学との出会い──色彩理論と点描技法」に1章が費やされるのも楽しみ。最後に、ハルカス展望台のキャラクター「あべのべあ」と上野駅のキャラクター「エキュート上野パンダ」が仲よく登場。上野パンダはなんの芸もないただの白黒パンダだが、あべのべあは空色のクマの体に雲が漂うシュールな着ぐるみ。それぞれアカデミズムと新印象派を象徴してるんだろうか。

2014/06/04(水)(村田真)

山元勝仁「eruptions」

会期:2014/05/30~2014/06/15

ROPPONGI HILLS A/D GALLERY[東京都]

アンフォルメル風に絵具をのせた正方形のタブロー上に、紙でつくったキノコや草花や記号類が生えている。タブローを横にすると「生えてる」のだが、壁に掛けているのでタブローから飛び出してるというべきか。そのキノコや記号はにぎやかなパターンで彩られ、草間彌生や村上隆の図柄を思い出してしまう。そもそもつくりがチープだし。

2014/05/30(金)(村田真)

ゴー・ビトゥイーンズ展 こどもを通して見る世界

会期:2014/05/31~2014/08/31

森美術館[東京都]

1階下(森アーツセンターギャラリー)の「こども展」に合わせた企画なのか、「こども展」がモネやルノワールやピカソらモダンアートの巨匠による子どもを描いた絵なのに対し、こちらは子どもをモチーフにした現代美術の展示。奈良美智の絵画を例外として写真や映像が大半を占めるのは、メディアが多様化してるからというより、一筋縄ではいかない子どもの多面性を表現するためであり、子どもを捉えるアーティストの視点そのものが多様化したからでもあるだろう。たとえば、養子縁組した白人男性とアジア人の娘のツーショットを撮ったジャン・オーの「パパとわたし」シリーズを見て、禁断のエロティシズムを感じるのはぼくだけではないはずだ。ひととおり見終わった後に残るのは、カワイイとか無邪気といった陳腐な子どものイメージからはほど遠い、孤独でエロティックで生死の境をさまよう壮絶なイメージなのだ。たしかに子どものときってそうだったよな。

2014/05/30(金)(村田真)

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京都国立博物館 初夏のプレスセミナー in TOKYO

会期:2014/05/26

学士会館[東京都]

京博にこの秋、谷口吉生設計の平成知新館が完成し、館蔵品および京都の寺社からお宝を借りて、9月13日から「京へのいざない」でお披露目される。《伝源頼朝像》や《餓鬼草紙》や雪舟の《天橋立図》など教科書で見たことある作品がごっそり登場。これで常設展の料金(一般520円)で見られるからうれしい。キャッチフレーズは、ズラリ国宝、ずらり重文。また10月7日からは修理完成記念として「国宝 鳥獣戯画と高山寺」も開かれる。こちらは特別展なので一般1,500円とられるが。

2014/05/26(月)(村田真)