artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

佐藤翠 展「A June House」

会期:2014/06/02~2014/07/04

第一生命南ギャラリー[東京都]

計9点の展示。正面の壁にはカーペットを描いた200号の大作が3点並び、1点はカーペットらしい装飾が施されているが、あと2点はほとんど抽象画。ほかに、壷、靴、皿などが並ぶ棚を描いた100号3点と80号1点、上に靴、下に服が並ぶクローゼットが1点。残る1点は異質で、S130号に花のある風景を描いているが、正方形のせいかクリムトを想起させる。気づくのは、花を除けば、カーペットも棚もクローゼットもすべてモチーフは矩形で、それを正面からとらえて画面にぴったし収めていること。つまりカーペットや棚の輪郭が画面の枠に一致しており、カーペットの柄や棚の内容がそのまま絵柄、絵の内容にスライドしているのだ。形式と内容の過不足のない一致、と書くと窮屈そうに聞こえるかもしれないが、佐藤の優れたところはそんな「不自由さ」を微塵も感じさせない点にある。

2014/06/17(火)(村田真)

ヴァロットン──冷たい炎の画家

会期:2014/06/14~2014/09/23

三菱一号館美術館[東京都]

ヴァロットンは美術史の主流に躍り出ることはなかったけど、知る人ぞ知る、ある意味もっとも「おいしい」立場にいる画家かもしれない。その微妙な立ち位置や、一風変わった造形的センスは、同じスイスのホドラーやバルテュスとどこか似ている。この3人が今年日本で紹介されるというのも偶然ではないだろう。肖像画家から出発したという端正な人物画をはじめ、浮世絵の影響が指摘できそうな大胆な構図の風景画、ときおりマンガチックな木版画、古典的なのに斬新なヌード画まで、けっこう楽しむことができた。こういう埋もれかけた画家をもっと発掘してほしいものだ。

2014/06/17(火)(村田真)

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富田有紀子

会期:2014/05/31~2014/06/14

ギャラリー椿[東京都]

富田が版画やインスタレーションから油彩による花のような絵に絞ったのは、90年ごろだったか。だとするともう四半世紀近い。当初の花のような絵から明確に花になり、そこに果実が加わり、なぜか洞窟が割り込んできたりもしたが、基本的に植物を描き続けている。今回はザクロの種が加わり、そこからの連想なのかイクラも登場、さらに青いガラス玉まで引っぱり出してきた。質感や透明感などかなりリアルに描いてるが、写真的リアリズムにはない手仕事感が富田らしいところ。タイトルに付されたナンバーを見るとすでに千近い(もう超えてるかも)。ならせば年に40点。これからも注目し続けたい画家のひとり。

2014/06/10(火)(村田真)

石内都 展──幼き衣へ

会期:2014/06/05~2014/08/23

LIXILギャラリー[東京都]

背守り展と同時開催。年季の入った幼児の着物ばかりを撮っている。蜷川実花ばりにハデな色合いだが、比べものにならないくらい陰影が深く、重い。着物自体が古いため多くの時間を集積しているのは間違いないが、それだけでなく昔は1枚の着物を何代にもわたって着ていたというから、たくさんの子どもの垢(アウラといってもいい)がずっしりこびりついてるのかもしれない。一種の心霊写真。

2014/06/10(火)(村田真)

背守り 子どもの魔よけ展

会期:2014/06/05~2014/08/23

LIXILギャラリー[東京都]

「背守り」とは、背負った赤ちゃんの背中から魔物が入らないように守るため、着物に縫いつけたおまじないのこと。「福」などの単語や呪文(経文)、草花の刺繍、赤い糸や布切れなどを縫いつけたものが多い。亀のアップリケがあるのは甲羅に守られているからか。なかには三角形を逆に重ねたダビデの星もあって、どんな効能があるんだろう。おまじないと飾りを兼ねた日本人の手仕事だが、ストラップの元祖かもしれない。

2014/06/10(火)(村田真)

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