artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

見晴らす展

会期:2014/05/30~2014/06/22

ポーラミュージアムアネックス[東京都]

サブタイトルは「日本のけしきを彫る人 田中圭介」。木の固まりから風景をジオラマ的に彫り出してる。わざわざ「日本のけしき」としているのは樹木が生い茂ってる風景だからだろう。ふつう木彫というのは森から切り出した角材を彫っていくのに、これは角材から森を彫り出していくところがふつうじゃない。ふつうじゃないのはほかにもあって、風景なのに縦長の角材や額縁みたいな木枠から彫り出したり、樹木だけでなく川や雲(や噴煙?)みたいな液体・気体まで彫ったりしてること。木彫のルーツ(森)をたどりつつその限界を突破しようという意志が感じられ、しかもそれをたしかな技術でわかりやすくかたちに表わしている。これは高得点。でも一歩間違えればつまらない工芸品に陥りかねない危うさもある。

2014/06/10(火)(村田真)

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トーキョーワンダーウォール公募2014入選作品展

会期:2014/06/07~2014/06/29

東京都現代美術館[東京都]

以前に比べてイラストみたいな絵は減ったけど、図抜けた作品も減った気がする。ちょっといいなと思っても、ミヒャエル・ボレマンスの真似だったりして(約2名)油断できない。情報の早さと模倣の技術には感心するけどね。ボードにスケッチやメモみたいなものをペタペタ貼った大人倫菜の《絵画における私の45日間の冒険》には惹かれるものがあった。

2014/06/10(火)(村田真)

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ミッション[宇宙×芸術]──コスモロジーを超えて

会期:2014/06/07~2014/08/31

東京都現代美術館[東京都]

ロケットの部品や模型もあれば、衛星がとらえた地球の映像もある。松本零士の宇宙漫画もあれば、ポカリスエットの宇宙CMもある。大きな展示室を丸ごと使って数千万もの星を映し出すスーパープラネタリウムには、大勢の観客が寝ていた。逢坂卓郎や名和晃平らの「美術作品」がなければ「宇宙博」と変わらない。子どもから大人まで、カップルもアートおたくも少しずつ楽しめる。裏返せば、あれこれありすぎて中心が見えず、全体として統一感に欠けるということだ。つまみ食いはできるけど、結局メインディッシュがなんだったのかよくわからない展覧会。

2014/06/10(火)(村田真)

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白川昌生 ダダ、ダダ、ダ──地域に生きる想像☆の力

会期:2014/03/15~2014/06/15

アーツ前橋[群馬県]

群馬在住の異才アーティスト、白川の初の大規模な個展。白川昌生(芳夫)というと、70年代にフランスとドイツに留学して「日本のダダ」を研究し、帰国後は赤城山麓に引っ込んで制作と著述に専念してきたことくらいは知っているけど、作品の全容を見る機会はなかった。今回は、ヨーロッパ滞在中に記したコンセプトノートから、「日本のダダ」の関連資料、ちょっと構成主義的な立体、地元の祭りのために制作した木馬、スノボを用いたインスタレーション、若いアーティストたちとのコラボレーションまで並んでいて、とても刺激的。展覧会の終盤で唐突に岡本太郎を思い出した。太郎も白川も若いころヨーロッパで苦学し、帰国後ほとんど孤軍奮闘した点で重なるけれど、ぼくが太郎を思い出したのはそんな理由ではなく、白川が60歳近くになってスノーボードを始め、スノボを使った作品までつくっているからだ。太郎も中年をすぎてからスキーを始め、メキメキと上達して玄人はだしの腕前を見せ、スキーに関する著書も残している。ふたりともスキー(スノボ)が好きーって話ではなく、アートとは一見なんの関係もない「雪遊び」にハマった好奇心のありようが共通していると思ったのだ。

2014/06/06(金)(村田真)

Art Meats 01 津上みゆき/狩野哲郎

会期:2014/03/08~2014/06/10

アーツ前橋 ギャラリー1[群馬県]

昨秋オープンしたアーツ前橋を初訪問。地域ゆかりの作家のコレクションもあるレッキとした美術館ではあるけれど、基本方針に「クリエイティヴ(創造的であること)」「シェア(みんなで共有すること)」「ダイアログ(対話的であること)」を掲げ、企画展を軸に地域アートプロジェクトも推進していく開かれた姿勢は、むしろオルタナティヴスペースに近い。市の中心街に位置する建築も開放的で、通りに面した1階はガラス張り。展示室は1階にギャラリー1があり、階段で地下へ降りて長いギャラリーをぐるっと1周するプランだが、ギャラリーを仕切る壁にところどころ窓がうがたれてるせいもあり、なんとなく路地を遊歩するイメージだ。その1階のギャラリー1でやっていたのが津上と狩野の2人展。津上は正方形のS50号を3点に、幅3メートルを超すP500号1点の出品。「風景画」だというが、原色のせめぎあう画面はいわゆる抽象画で、とりわけ500号の大作は見ごたえがあり、誤解を恐れずに言えば「古きよき抽象画」の趣。一方、狩野は陶の皿やガラス器など回転対称の什器に、柑橘類やゴムボールなどを組み合わせたインスタレーションで、津上とはまったく別の世界を築き上げている。なぜこのふたりの組み合わせなんだろう。

2014/06/06(金)(村田真)

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