artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
グループ展「‘Cazador’KURAMATA Shiro/TAKAMATSU Jiro Photographed by FUJITSUKA Mitsumasa」
会期:2014/06/18~2014/07/19
「カッサドール」とは新宿2丁目にあったサパークラブで、倉俣史朗が内装を手がけ、高松次郎が壁画を描いた。その制作風景を撮影した藤塚光政の写真を展示しているのだが、これがただの記録写真ではない。高松は壁に例のごとく人影を描いていく。その方法はモデルの背後から強い光を当てて壁に影を投影し、それを高松がなぞっていくというやり方。しかしこれだと高松自身の影も重なってしまう。それを藤塚は撮っているのだ。つまりここにはモデルの影、それをなぞった影の絵、そして高松自身の影という三つの影が捉えられているわけだ。間違って高松は自分の影を描かなかっただろうか。
2014/07/11(金)(村田真)
「みずのすがた わが山河 Part V」展
会期:2014/07/12~2014/09/21
東京オペラシティアートギャラリー[東京都]
こってり油っぽかったメインディッシュの後は、水々しい日本画のデザート。3分で出たわ。
2014/07/08(火)(村田真)
絵画の在りか the way of PAINTING
会期:2014/07/12~2014/09/21
東京オペラシティアートギャラリー[東京都]
相変わらず展覧会で絵画はよく見かけるけど、「絵画の現在」を特集した企画展は意外なほど少ない。ほとんどないといってもいい。記憶にあるのは、06年の「エッセンシャル・ペインティング」と10年の「絵画の庭──ゼロ年代日本の地平から」くらい。どちらも大阪の国立国際美術館の企画で、しかも前者は欧米の作家のみだったため、日本人のもやれという声に押されて後者を企画したと勝手に解釈しているのだが、とにかくそれほど日本では絵画の展覧会が成立しにくいようなのだ。なぜか? それは本展のカタログのなかで堀元彰氏も書いてるように、絵画があまりに多様化してもはやひとつの基準では計れず、展覧会としてまとまらないからだ。だからこの展覧会も明確なテーマを打ち出すことなく、「絵画の在りか」といういささか投げやりなタイトルをつけるしかなかったのだ、たぶん。でもぜんぜん方向性が見出せないわけでもなく、わずかながら示してはいる。それは絵具や支持体など物質性の強調であり、その結果としての表象性から抽象性への傾きだ。これはよくわかる。ここに出ている24作家による約110点の作品の大半は具体的イメージを伴っているものの、いわゆる具象画とは呼べるものは少ない。たとえば小西紀行は家族の肖像を描いてるらしいが、われわれの目はなにより大胆なストロークに引きつけられる。今井俊介の絵画は幾重にも重なった旗のようにも見えるし、抽象パターンの組み合わせにも見える。五月女哲平と高木大地の作品も同じく具象的イメージと抽象パターンを行ったり来たりする。どうやら具象とか抽象とか、ポップとかミニマルとか、なんとか主義やなんとかイズムに染まらずに絵を描くことができる、いや、絵を描き続けなければならない時代なのだ、いまは。
2014/07/08(火)(村田真)
大塚泰子 展「空間色 space color」
会期:2014/07/08~2014/08/02
ケンジタキギャラリー[東京都]
太さ1センチほど、長さ90センチはあろうかという細長い角材に布を張り、片面だけ赤く塗って壁に取りつけている。一見ただの角材だが、絵画としての条件は備えている。ほかにも、生の綿キャンバスの半分だけ壁と同じ白色に塗ったり、縁の部分だけ白く塗ったり。絵画の形式を内容にした絵画、といえばいいのか。
2014/07/08(火)(村田真)
オルセー美術館展 印象派の誕生──描くことの自由
会期:2014/07/09~2014/10/20
国立新美術館[東京都]
もう5、6回目だろうか、オルセー美術館展。毎回手を替え品を替えコレクションを小出しに紹介しているが、今年は第1回印象派展から140年になることから「印象派の誕生」をテーマとした。マネの《笛を吹く少年》を筆頭に、ミレー《晩鐘》、モネ《サン・ラザール駅》、アカデミズムの画家カバネルの《ヴィーナスの誕生》も含め、有名絵画・人気作品が目白押し。でもぼく的には、印象派の主流から少し外れたバジールの《バジールのアトリエ、ラ・コンダミンヌ通り》や《家族の集い》、床の輝きを見事に表現したカイユボットの《床に鉋をかける人々》、ヴェルレーヌとランボーが登場するファンタン・ラトゥールの《テーブルの片隅》、最愛の母を描いたホイッスラーの《灰色と黒のアレンジメント第1番》、印象派にはない独特の趣味を感じさせるティソの《ミラモン侯爵夫妻と子どもたちの肖像》などを見られたのがうれしい。次回は陳腐なアカデミズム絵画ばかりを集めた「ポンピエの画家たち」を特集してくれないかな。
2014/07/08(火)(村田真)