artscapeレビュー

木梨憲武×20years

2014年07月15日号

会期:2014/05/20~2014/06/08

上野の森美術館[東京都]

美術館前は長蛇の列だったが、たまたま招待券を持ってたんでスルーパス。館内もすごく混んでいて、VOCA展のオープニングの10倍はいたかな。平日の午後なのに、しかも芸術家ではなく芸人の個展なのに。いや芸人の個展だから混んでたんですね。でも思ったより悪い展覧会ではなかった。作品は絵画が中心で、樹木や植物から派生した抽象パターン、アルファベット、天体らしきもの、各地を訪れたときのスケッチ、絵具チューブを集積した立体、デザイナーとコラボレーションしたCGなど多彩だ。描きたいものを自由に描く──言うはやさしいが、描いてるうちによく見られたい、高く評価されたいと思い始め、妙に技巧に走ったり、二科展に出したりするのが芸能人の陥りやすい落とし穴だ。ちやほやされてついその気になり、みずからハードルを上げてしまい、自由に描けなくなる。こういうのを本末転倒という。もちろん木梨もただ無邪気に描いてるわけでなく、見る人の反応は考えているだろうけど、初期の「描く喜び」を忘れていないことは作品から伝わってくる。なによりウザい上昇志向や勘違いがなく、「これでいいのだ」と納得しているところが清々しい。

2014/06/04(水)(村田真)

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