artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

バルテュス展

会期:2014/04/19~2014/06/22

東京都美術館[東京都]

今年は日本とスイスの国交樹立150年とのことで、ヴァロットン展やホドラー展など通好みの展覧会が企画されているが、なかでも最大の目玉がこのバルテュス展だ。これまで日本では84年と93年の2回個展が開かれているが、今回は没後初の回顧展で、11歳のとき制作した素描集《ミツ》から晩年の未完の作品までの出品となる。通して見てみると、構図はアンバランスだし色彩は濁ってるしモデルのポーズもぎこちないし、アカデミックな美術教育を受けた人ならやらないようなことを平気でやってることがわかる。通常なら貴族のアナクロ趣味で終わったかもしれないところを、彼は財力と別の趣味(少女趣味)を発揮して描き続け、技術的欠陥をバルテュスならではのオリジナリティに変えてしまった。財力だけでなく努力の人でもあったのだ。初期のピエロ・デラ・フランチェスカの模写、《夢見るテレーズ》をはじめとする一連の少女像、まるで日本画な《朱色の机と日本の女》など見どころは多い。風景画や静物画にも瞠目すべきものがある。これは必見。

2014/04/18(金)(村田真)

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フランス印象派の陶磁器1866-1886──ジャポニスムの成熟

会期:2014/04/05~2014/06/22

パナソニック汐留ミュージアム[東京都]

北斎漫画から絵柄をパクったブラックモンの絵付け皿をはじめとするジャポニスムな陶磁器の展示。いまそんなことやったら著作権侵害で日仏の外交問題に発展しかねないけど、もう150年近くも前の話だから、逆にフランス美術に影響を与えたと優越感に浸る日本人のほうが多いに違いない。ジャポニスムではないが、まるで油絵のような鮮やかな色彩と筆触が再現されるバルボティーヌと呼ばれる技法の壷も出ている。これは油絵を描くように絵付けするため、描きやすいように壷も四角く扁平なかたちをしているのが興味深い。壷がタブロー化してるのだ。ところで、陶磁器そのものは印象派と直接関係ないのに、「フランス印象派の陶磁器」と銘打っているのは客寄せのためか。たしかにブラックモンは第1回印象派展に参加してるけど、そのとき出したのは銅版画だったし。その帳尻合わせか、モネ、ルノワール、ピサロ、シスレーら印象派の絵画も申しわけ程度に展示されていた。

2014/04/17(木)(村田真)

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椿会展2014──初心

会期:2014/04/10~2014/05/25

資生堂ギャラリー[東京都]

赤瀬川原平、畠山直哉、内藤礼、伊藤存、青木陵子の5人展。幅広い世代の絵画、写真、インスタレーションなどの発表だが、見てよかったと思えるのは赤瀬川と畠山の作品。赤瀬川はクラシックカメラを克明に写生した鉛筆画90点を並べている。カメラ雑誌の連載エッセイのために描いたイラストで、これだけ並ぶと壮観だ。フリーハンドながら細部までナメるように丹念に描かれ、機種名や部品名なども記されていて、カメラへのフェティッシュな愛情を感じさせる。オタク老人の面目躍如。畠山は人けのない山間部で撮った送電鉄塔の写真を出品。とくにスイスの山奥に打ち捨てられた鉄塔の残骸写真は、自然のなかで組み立てた鉄骨によるインスタレーションの記録写真のようで、幻想的ともいえる奇妙な空気感が漂う。若いアーティストとは経験値の差を感じてしまう。

2014/04/15(火)(村田真)

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光風会100回展記念「洋画家たちの青春──白馬会から光風会へ」

会期:2014/03/21~2014/05/06

東京ステーションギャラリー[東京都]

日本初の洋画家の団体である明治美術会から、外光派の新風を吹き込んだ黒田清輝らが独立して白馬会を設立し、その白馬会の解散後に立ち上げたのが光風会だ。いわば美術団体の老舗であり、その公募展の100回を記念する展覧会。ひととおり見た印象は「堅実」のひとこと。といえば聞こえはいいが、マジメだけどおもしろみがないということでもある。個人で芸術を追求するより、団体として高めていこうという姿勢が勝ってる。裏返せば、個人の突出を嫌う。こうした体質こそが日本の美術団体のいちばんの問題点ではないか。でもほかの団体に比べれば光風会はまだいいほうかもしれない。

2014/04/15(火)(村田真)

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松本清志のWONDER LIFE SCORE──音とオブジェ/表現の王国

会期:2014/04/09~2014/04/13

大倉山記念館ギャラリー[神奈川県]

2年前に亡くなったマツキヨこと松本清志をしのぶ追悼展。マツキヨは本来チェリストだが、1980年前後から電子音やオブジェを用いたパフォーマンスを発表。ぼくは、パフォーマンスアーティストで後に国際芸術センター青森の館長を務めた浜田剛爾さんを通じて知り合い、浜田さんのパフォーマンスやピアニスト島田璃里さんのコンサートで共演する彼の演奏に接してきた。そのムーミンのような体型と温厚な性格は、とげとげしいヤツが多かった当時のアヴァンギャルドの世界では希少で、多くの人たちに慕われていたものだ。追悼展では80年代のチラシやリーフレット、記録写真、ビデオなどをとおしてマツキヨの仕事を振り返ってる。もう長いこと音信不通だったため彼の死はつい最近まで知らなかったが、今回ぼくも写ってる写真を公開するため奥さんの里美さんがぼくを探し当て、知らせてくれた次第。30年前のぼくが若いマツキヨと一緒に写っている。

2014/04/12(土)(村田真)