artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
小山利枝子 展
会期:2013/06/25~2013/07/07
アートコンプレックス・センター[東京都]
住宅地に建つこのスペースには以前、夜のパフォーマンス公演を見に来たことはあるけど、昼間来るのは初めて。ずいぶん奇抜な外観だ。内部も奥が深い。その地下全室を使っての個展。150号を3点つないだ大画面3点を中心に、100号以上の大作が並ぶさまは壮観。奥には花を描いた水彩などの小品もある。小山は花の絵から徐々にかたちを崩して流動化させ、色彩とストロークを強調した抽象画に近づいていたが、今回、中央に鎮座する幅5メートル近い大作には、ぼやけているとはいえ明らかに花とわかる形象が描かれている。しかもそれがほかならぬ蓮の花である点に、なにか作者の心境の変化を感じずにはいられない。もちろん大震災と原発事故が響いていることは間違いないだろうけど、これが過去への揺り戻しなのか、それとも新たな方向性を示しているのか。
2013/06/28(金)(村田真)
石原友明「アウラとエクトプラズム」
会期:2013/06/22~2013/07/28
MEM[東京都]
スタイロフォームの球体をつなげて革をかぶせたモコモコの物件と、それを石原自身の身体に装着した写真の展示。その物件にはマウスピースみたいなものがついていて、写真では全裸の石原がそれを口にくわえた状態で写っている。これがちょうど口から出たアウラやエクトプラズムのように見えなくもない。いわば身体から出た霊体の物体化。ほかにも、正方形の画面に全裸の作者自身をプリントし、その上からレオナルドの人体比例図のように円形や線を加えた作品もあり、初期のセルフヌードを思い出す。革の球体もセルフヌードも80年代に出てきた形態やアイディアだが、それらを入れ替えたり組み替えたりしながら新たな展開を見せている。
2013/06/23(日)(村田真)
藤原彩人 彫刻「空の景色と空な心」
会期:2013/06/06~2013/06/23
ギャラリー21yo-j[東京都]
大きな壁面に陶板レリーフがドーンと1点、床に1メートル余りの立像が3体。レリーフは、向かい合ってヒソヒソ話するふたりのヌード像で、その足下から黒い影が左下に3メートルほどビヨーンと延びている。影をレリーフで表現するか? しかも影にまで目や鼻の輪郭線が描かれている。ここでは人体が平面化し、影が立体化して等価になっているのだ。2次元と3次元、あるいは絵画と彫刻の境界を考えさせる作品。一方、3体の立像はいずれも短足で、尻がデカく、手も長く、なで肩で、ポケッと口を開けている、つまり「だらしない」かっこうをしている。これは別に日本人の不格好さを揶揄したものではなく、陶の素材や成型上の制約から導かれた形態らしい。内部は空っぽで、脚や腕も空洞になっているという。いわば器。ここに人体=陶器のアナロジーを読みとることもできる。意外と奥が深いなあ。
2013/06/23(日)(村田真)
秋山直子 針穴写真展「街を延う」
会期:2013/06/16~2013/06/23
吉田町画廊[神奈川県]
タイトルの「延う」は「はう」と読む。街をはうようにして撮ったピンホール写真ということだ。写された風景は見覚えのある場所が多い。伊勢佐木町とか黄金町とか吉田町とか、この近所のディープな横浜の街並だ。が、すこしピンボケのせいか、色彩がパステルカラーっぽいせいか、どことなくパリの街並を思わせないでもない。でもよく見るとやっぱし横浜。
2013/06/22(土)(村田真)
近藤昌美「IRON PAINTING & OIL PAINTING OF NEW SERIES」
会期:2013/06/12~2013/07/07
HIGURE17-15cas[東京都]
1階は鉄板にラッカーなどで描いた「アイアン・ペインティング」、2階はカンヴァスの「オイル・ペインティング」。聞いただけだとヌルヌルテカテカ黒光りしてるマッチョな絵って感じだが、実際はマッチョではないけど、ドクロとか人型とかハトといった具象的なシルエットに、絵具の滴りや円錐形など抽象形態のレイヤーがかぶさり、多次元的光景を現出させている。でもどうせ鉄板に描くんだったらもっとヌルテカさせて、カンヴァスとは違う重厚感を見せつけてほしかった。
2013/06/21(金)(村田真)