artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
東北芸術工科大学卒業・修了展
会期:2013/02/23~2013/02/27
東京都美術館[東京都]
隣の部屋にはたくさんの若者が集ってるので「東京画」の続きかと思ったら、素人っぽい彫刻が並んでいて、なぜか山口晃と山下裕二が対談している。どうやら別の展覧会にまぎれ込んだらしい。そこに彫刻家の深井聡一郎が来て、これは東北芸工大の卒展で、自分も教えているという。そうか、ついでだから見ていくか。終了間際にさっと回った限りで気になった作品を挙げると、小さなキャンバスにパステルカラーの絵具を盛り上げた高田幸平の小品、いまどきありがちな絵ながらそそられる藤倉麻美の物語画、それに酒見浩司の版画による抽象風景。
2013/02/23(土)(村田真)
東京画II──心の風景のあやもよう
会期:2013/02/24~2013/03/07
東京都美術館[東京都]
栃木からトンボ返りで上野へ。「東京画」はトーキョーワンダーサイト主催の展覧会なのに、なんで自分とこ(本郷)でやらないんだと思うが、きっと都美館側からオファーが来て同じ都の組織として断れなかったんじゃないかと勝手に推測。そんな事情はどうでもいい。桑久保徹は西洋名画が額縁つきでズラッと並んだ海岸風景、ほか数点の展示。これはすばらしい。私が裕福なコレクターだったら迷わず買い占めるだろう。千葉正也は相変わらず白い手づくり人形を風景のなかに置いて描いているが、おもしろいのはキャンバスを壁にかけず、彫刻みたいに台座の上に立てていること。だから裏が丸見えで、木枠は自作であることがわかる。佐藤翠はカーペット、靴箱、クローゼットなど四角い家具調度をそのまま四角いキャンバスに収めた絵。しかしカーペットを描こうと思うか? それを壁に飾るか? この3人は絵画というメディアに対してきわめて自覚的、かつ攻撃的だ。一方、熊野海は鮮やかなストライプ模様を背景に、人の集う海岸に核爆発や彗星墜落のようなカタストロフィを描き出す。未来を予言しているとはいわないが、モチーフも色彩もにぎやかで、まさに旬の絵画。いまどきの日本の絵画の最良部分がここに集結している。
2013/02/23(土)(村田真)
岡崎和郎/大西伸明
会期:2013/02/02~2013/03/03
MA2ギャラリー[東京都]
《HISASHI》をはじめ工芸的な仕上げの彫刻で知られる岡崎と、限りなく緻密なフェイク作品で知られる大西という異色の2人展。世代も背景も異なる作家の組み合わせだが、昨年に続き2回目だという。金属棒を握った手腕の骨のフェイク、開いた手のひら型の皿、握った手のひらの隙間を型どった透明オブジェ(握り心地がよさそうだ)など、手を巡る精妙な作品が多く、それがまたふたりを結びつけてもいるだろう「テクネー」を想起させる。手によるテクネー、テクネーによる手。
2013/02/17(日)(村田真)
加賀美健「SPICY!!!」
会期:2013/01/25~2013/03/03
ナディッフギャラリー[東京都]
作家も作品も知らずに行ったら、ウンコチンコ系の作品がところ狭しとひしめいている。これは想定外。なんというか、ウンコやチンコに異常な興味を抱く肛門期をそのまま大人まで引きずってしまったような作品、といったらいいか。十字架にパンティをはかせたり、ぬいぐるみの動物のお尻から巨大ウンコが出ていたり、ブラピやディカプリオの顔写真つきビニール袋にウンコ(模型)を入れたり、躊躇とか深慮とかまるで感じられず、嬉々としてつくっている様子なのだ。とはいえ、作品間の距離が一定に保たれていたり、なにをどこに配置するかもそれなりに計算した形跡がうかがえ、作家としての強い意識が感じられる。
2013/02/17(日)(村田真)
アクションドローイング ヒーロー
会期:2013/01/26~2013/02/24
六本木ブルーシアター[東京都]
韓国からやって来た4人のドローイング野郎ども。歌って踊れるじゃないけど、踊って笑って絵も描く珍しいエンターテインメントショーだ。最初は日本人へのサービスなのか、坂本龍馬のポートレートに始まり(さすがに伊藤博文じゃなかった)、4人がそれぞれ描いた絵を合わせるとマイケル・ジャクソンになったり、黒い画面に黒い絵具で描いてサッと揺するとブルース・リーの顔が表われたり、積み上げたルービックキューブをいじるとスーパーマンの顔になったり、客を舞台に上げて伝言ゲームをしながらウルトラマンの姿を浮かび上がらせたり、「ヒーロー」のテーマに沿って観客を楽しませてくれる。絵もダンスも笑いも二流だけど、もの珍しさも手伝ってあっという間に1時間半がすぎてしまった。こういうアートをエンターテインメントとして見せるショーは、70~80年代にニューヨークのザ・キッチンあたりでもやっていたかもしれないが、忘れたころに韓国から飛び出してきたのが驚きだ。でも比較するのもなんだが、ローリー・アンダーソンのショーなんかに比べれば思想性も批評性もなく、あくまでエンターテインメントに徹している点がいっそ潔いというか。そういえば『誰でもピカソ』をグレードアップさせればこんな感じかも。
2013/02/17(日)(村田真)