artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

阿佐ヶ谷美術専門学校卒業・修了制作展2013

会期:2013/02/21~2013/02/25

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

阿佐ヶ谷は美大以上にいい先生がそろってるので卒展も期待できそうだが、大半がデザイン科。しかもイメージクリエイション科、視覚デザイン科、メディアデザイン科などに分かれ、それぞれ20~30人生徒がいるのに、絵画表現科はわずか4人だけ。そのため会場の隅の一画に追いやられていた。しかし少数精鋭というか、さすがに4人とも三流美大生よりレベルは上だが、突出したものがなくドングリの背比べ。おっと、菊村詩織が一馬身リードか。競馬じゃないって。

2013/02/28(木)(村田真)

トム・サックス展「ストア」

会期:2013/02/20~2013/03/04

8/アートギャラリー/小山登美夫ギャラリー[東京都]

ギャラリーの中央にデーンと屋台というかキャビネットみたいなものが置かれ、そこに本やらオブジェやらが並んでいる。底にはキャスターもついていて、いかにも素人が手づくりしましたっていうチープな感じだ。そこに並んでいるのは、自分のカタログや自作を印刷したトランプや宇宙空間でも遊べる磁石付のチェスといったエディションもの。これは自作のミニチュアを収納したデュシャンの「トランク」からの発想だろうが、このように屋台でアートを見せる(売る)という商売はありかも。

2013/02/27(水)(村田真)

損保ジャパン美術賞展 FACE2013

会期:2013/02/23~2013/03/31

損保ジャパン東郷青児美術館[東京都]

「年齢・所属を問わず、真に力がある作品」を公募したところ、10代から90代まで1,275人の応募があったという。うち受賞作品9点を含む69点を展示している。ちなみにタイトルの「FACE」とは「Frontier Artists Contest Exhibition」の略称だそうだ。ザーッと見て、平面ならなんでもあるなと思った。油絵(+アクリル)から、日本画、版画、コラージュ、CGプリントまで、具象画も抽象画も、いまどきのチャラい絵も団体展系のシブい絵もなんでもあり。これらの価値基準はひとつじゃないはずのにどうやって審査し、優劣をつけたんだろう? きっと審査員のみなさんは神さまみたいな人たちなんだろうなあ。最初の部屋に9点の受賞作品が並ぶ。グランプリの堤康将はじめ、優秀賞の永原トミヒロ、近藤オリガ、田中千智、読売新聞社賞の高木彩らだが、続く非受賞者の作品とそう大差ないように思えた。むしろ俵萌子や室井公美子ら力のある抽象が受賞してないのが不思議なくらいだ。

2013/02/27(水)(村田真)

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ミニマル/ポストミニマル──1970年代以降の絵画と彫刻

会期:2013/02/24~2013/04/07

宇都宮美術館[栃木県]

県立美術館から宇都宮美術館に行くには、いったんバスで駅に戻り、もういちどバスに乗り換えなければならないのだが、本数が少ないので1本逃すと1時間くらい待たなければならない。実際1本逃してしまったためエライ目に会った。まあいいや。「ミニマル/ポストミニマル」は、70年代とそれ以降にスポットを当てた谷新館長(よく間違えられるらしいが、谷・新館長ではなく、谷新・館長)みずから渾身の力をふりしぼった(たぶん)企画。70年代といえば先ごろ埼玉近美でも「日本の70年代」展が開かれたばかりだが、埼玉がサブカルチャーにかなりのスペースを割いていたのに対し、宇都宮は美術のみ、というより絵画・彫刻のみ10人の作家に絞り込んだため、日本の現代美術の変遷がよくわかる展示だった。出品は、堀浩哉、辰野登恵子、中村一美、戸谷成雄、遠藤利克といった面々。展示は作家別でも時代順でもなく、70~80年代とか90年代とか大きな時代のくくりのなかで作家ごとに並べているので(だから同じ作家が何度も出てくる)、通時的にも共時的にもわかりやすい構成となっている。だいたいみんな70年代にミニマリズム(またはもの派)の桎梏・葛藤から出発し、80年代以降に表現性や象徴性を獲得し、近年それを深化させている。もう4半世紀ほど前、西武美術館で「もの派とポストもの派の展開」という展覧会が開かれたが、「ポストミニマル」は「ポストもの派」と重なる部分が多く、今回は「その後のポストもの派の展開」展といいかえてもいいくらいだ。そこでひとつわからないのが、なぜ90年代以降に登場した荒井経や薄久保香を入れたのかということ。それ以前の世代との比較対象としてはありかもしれないが、唐突感は否めない。ともあれ、70年代に批評家としてデビューした谷新(当時は「たにあらた」の表記だった)館長の総括・集大成ともいうべき力作。

2013/02/23(土)(村田真)

アジアをつなぐ──境界を生きる女たち 1984-2012

会期:2013/01/26~2013/03/24

栃木県立美術館[栃木県]

今日は栃木2連発。県立美術館の「アジアをつなぐ」は、これまで何度か開催して来た「女性展」の延長上に位置づけられるだろう。絵画あり彫刻あり、インスタレーション、写真、映像なんでもありなので展覧会としてまとまりに欠けそうだが、そこは「アジア」と「女性」がつなぎ止めてくれるので、ある意味安心して見ることができる。しかしそれは、見るときの心構えが「女性」「アジア」にシフトしているということであり、いいかえればフィルターを通して見ざるをえないということだ。では、フィルターを解除してもういちどながめ直すと、つまり「女性」も「アジア」も忘れて作品本位で見てみると、なにが残るか。イースギョンの陶器の破片を金継ぎでつなぎ合わせたオブジェ、ジョン・ジョンヨプの何万個もの小豆の肖像、ソン・ヒョンスク(過去何度か作品を見たが、女性とは思わなかった)の最小限の筆致……。みんな韓国人だった。アジアの中ではレベルが突出しているなあ。

2013/02/23(土)(村田真)

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